312 名前:おさかなくわえた名無しさん[sage] 投稿日:2006/09/27(水) 10:03:44 ID:csGjIxIF
まだ勤めて二年目くらいの頃、職場でムチャクチャ悔しい事があった。
相手に対する怒りと、それを抑えなくてはならない社会の厳しさ、
分かってはいるのに感情を表に出しそうな情けない自分、
そういうものが一気にこみ上げてきて、事務所の中で涙がこぼれそうになった。

この場で泣くのはいくらなんでも不味いと思い
「ちょっと倉庫に探し物行ってきます」と外へ出ようとして
机に向かった先輩の背後を通り抜けようとしたら、
先輩が振り向きもせずに腕をにゅっと伸ばしてきた。
「これ持ってけ」

その手に握られていたのは、飲みかけの缶コーヒー。
先輩が今自分で飲んでいたものだった。
何も言えずにそれを受け取り、事務所を出た。
先輩のせいで、倉庫に着く前に涙腺全開だった。

その先輩は、今は他の会社へ行ってしまった。
うちの会社と取り引きのある会社なので、用事があって出向くとたまに会える。
相変わらず、顔も上げずに「お世話様です」と言う。
そりゃもう同僚じゃないしな、仕事中じゃ話し掛けられんし、と思っていると
帰り際には顔を上げて、他の人にバレないように「にっ」と笑ってくれる。

缶コーヒー職人―その技と心






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