43:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:23:57 :ZJywfASQ
文乃 「お祭り? ってことは、ひょっとしてりっちゃん家も出店するの?」
理珠 「ええ。夏は焼きうどんでしたが、今度はかけうどんです」
うるか 「ほへぇ。いいねぇ。あたしも食べに行っちゃおうかなー……」 チラッ
成幸 「……? 何でこっちを見るんだ、うるか」
うるか 「いやぁ、成幸的に、受験生がこの時期にお祭りに行くのはアリかなー、って」
成幸 「俺の様子を伺ってたのか……。まったく」
成幸 「受験生だって息抜きくらい必要だろ。行きたいなら行くといいよ」
うるか 「やたっ! じゃあ、文乃っち、一緒にお祭りまわろ!」
文乃 「へ? う、うん。それはもちろん構わないけど……」
文乃 (わたしじゃなくて、成幸くん誘って行ったらいいのに……)
文乃 (ヘンなところ恥ずかしがり屋なんだから。仕方ないなぁ。一肌脱いであげるとするか)
文乃 「………………」
文乃 (べっ……べつに、わたしが成幸くんと一緒がいいから、とかじゃないからね!)
文乃 「お祭り? ってことは、ひょっとしてりっちゃん家も出店するの?」
理珠 「ええ。夏は焼きうどんでしたが、今度はかけうどんです」
うるか 「ほへぇ。いいねぇ。あたしも食べに行っちゃおうかなー……」 チラッ
成幸 「……? 何でこっちを見るんだ、うるか」
うるか 「いやぁ、成幸的に、受験生がこの時期にお祭りに行くのはアリかなー、って」
成幸 「俺の様子を伺ってたのか……。まったく」
成幸 「受験生だって息抜きくらい必要だろ。行きたいなら行くといいよ」
うるか 「やたっ! じゃあ、文乃っち、一緒にお祭りまわろ!」
文乃 「へ? う、うん。それはもちろん構わないけど……」
文乃 (わたしじゃなくて、成幸くん誘って行ったらいいのに……)
文乃 (ヘンなところ恥ずかしがり屋なんだから。仕方ないなぁ。一肌脱いであげるとするか)
文乃 「………………」
文乃 (べっ……べつに、わたしが成幸くんと一緒がいいから、とかじゃないからね!)
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44:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:24:30 :ZJywfASQ
文乃 「成幸くんも一緒にどう?」
うるか 「!?」 パァアアアアアア……!!!
成幸 「へ? ああ、悪い。週末はバイトが入っててさ。たぶん無理かな」
うるか 「………………」 シューーーン
文乃 「あっ……そうなんだ。残念だけど仕方ないね」
文乃 (うるかちゃんの浮き沈み分かりやすいなぁ……。あれでバレてないつもりなんだよね……)
成幸 「悪いな。ふたりで楽しんでこいよ」
文乃 「うん! りっちゃん家のうどん楽しみだなぁ~」
うるか 「お祭りで食べると、味わいもヒトシオだよねぇ~」
成幸 「緒方も出店がんばってな」
理珠 「はいっ! 緒方うどんの美味しさをもっと多くの人に知ってもらうためにがんばります!」
成幸 (がんばりが壮大すぎる……)
文乃 「成幸くんも一緒にどう?」
うるか 「!?」 パァアアアアアア……!!!
成幸 「へ? ああ、悪い。週末はバイトが入っててさ。たぶん無理かな」
うるか 「………………」 シューーーン
文乃 「あっ……そうなんだ。残念だけど仕方ないね」
文乃 (うるかちゃんの浮き沈み分かりやすいなぁ……。あれでバレてないつもりなんだよね……)
成幸 「悪いな。ふたりで楽しんでこいよ」
文乃 「うん! りっちゃん家のうどん楽しみだなぁ~」
うるか 「お祭りで食べると、味わいもヒトシオだよねぇ~」
成幸 「緒方も出店がんばってな」
理珠 「はいっ! 緒方うどんの美味しさをもっと多くの人に知ってもらうためにがんばります!」
成幸 (がんばりが壮大すぎる……)
45:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:25:07 :ZJywfASQ
………………金曜日 緒方家
理珠 「鍋良し、おたま良し、カゴ良し、あとは、と……」 ゴソゴソゴソ……
理珠 (ふむ、完ぺきですね。小物類は全部寸胴鍋に入れておけばいいでしょうか)
理珠 (でも、寸胴鍋に荷物を入れてしまうと、重くて運びにくいですね……)
ガサゴソガサゴソ……
理珠 「他の荷物は別の段ボールに入れて、っと……」
理珠 (運ぶ回数は増えますが、これなら車まで軽く運べそうですね)
ガラッ
親父さん 「リズたま~、準備ご苦労さま。ありがとうね」
理珠 「いえ。お父さんは店で忙しいでしょうから、準備くらいはさせてください」
理珠 「二回確認しましたが、荷物は完ぺきです」
親父さん 「さすがリズたま! ありがとう!」
親父さん 「……ママは用事があって実家に帰省中だしし、リズたまに頼ってしまってごめんな」
親父さん 「明日も出店があるし、受験生なのに受験勉強もなかなかさせてあげられないし……」
………………金曜日 緒方家
理珠 「鍋良し、おたま良し、カゴ良し、あとは、と……」 ゴソゴソゴソ……
理珠 (ふむ、完ぺきですね。小物類は全部寸胴鍋に入れておけばいいでしょうか)
理珠 (でも、寸胴鍋に荷物を入れてしまうと、重くて運びにくいですね……)
ガサゴソガサゴソ……
理珠 「他の荷物は別の段ボールに入れて、っと……」
理珠 (運ぶ回数は増えますが、これなら車まで軽く運べそうですね)
ガラッ
親父さん 「リズたま~、準備ご苦労さま。ありがとうね」
理珠 「いえ。お父さんは店で忙しいでしょうから、準備くらいはさせてください」
理珠 「二回確認しましたが、荷物は完ぺきです」
親父さん 「さすがリズたま! ありがとう!」
親父さん 「……ママは用事があって実家に帰省中だしし、リズたまに頼ってしまってごめんな」
親父さん 「明日も出店があるし、受験生なのに受験勉強もなかなかさせてあげられないし……」
46:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:25:50 :ZJywfASQ
理珠 「? 私はこの家の娘ですから、お手伝いをするくらい当然だと思いますが」
理珠 「それに、普段成幸さんに教えてもらってしっかりと勉強していますから、」 フンス
親父さん 「………………」 ピクッ
理珠 「家のお手伝いを少しするくらいでどうにかなるようなことはありません!」
親父さん 「リズたま……」 (……センセイの名前が出てくるのは気になるが……)
親父さん (健気なリズたまがかわいいからどうでもいいか……) ホゥ……
理珠 (……とはいえ、明日は一日勉強ができないのは事実ですから、)
理珠 (今日は夜まで勉強しておかないとですね)
理珠 「では、お父さん。私はそろそろ部屋に戻ります」
親父さん 「ん、ああ。分かったよ。勉強がんばってね、リズたま」
親父さん 「じゃあ、俺は荷物を車に積んでおこうかな……」 グッ
理珠 「あっ、その寸胴鍋、中身が……――」
親父さん 「――だいじょぶだいじょぶ。重いものを運ぶのには慣れてんだ」
親父さん 「よいしょっ、と……」 グイッ 「ん……!?」
グキッ……!!!
理珠 「? 私はこの家の娘ですから、お手伝いをするくらい当然だと思いますが」
理珠 「それに、普段成幸さんに教えてもらってしっかりと勉強していますから、」 フンス
親父さん 「………………」 ピクッ
理珠 「家のお手伝いを少しするくらいでどうにかなるようなことはありません!」
親父さん 「リズたま……」 (……センセイの名前が出てくるのは気になるが……)
親父さん (健気なリズたまがかわいいからどうでもいいか……) ホゥ……
理珠 (……とはいえ、明日は一日勉強ができないのは事実ですから、)
理珠 (今日は夜まで勉強しておかないとですね)
理珠 「では、お父さん。私はそろそろ部屋に戻ります」
親父さん 「ん、ああ。分かったよ。勉強がんばってね、リズたま」
親父さん 「じゃあ、俺は荷物を車に積んでおこうかな……」 グッ
理珠 「あっ、その寸胴鍋、中身が……――」
親父さん 「――だいじょぶだいじょぶ。重いものを運ぶのには慣れてんだ」
親父さん 「よいしょっ、と……」 グイッ 「ん……!?」
グキッ……!!!
47:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:26:21 :ZJywfASQ
親父さん 「」
理珠 「お、お父さん……?」
理珠 「寸胴鍋、中身を別の段ボールに移したから軽いですよ、って言おうとしたんですが……」
理珠 「大丈夫、です、か……?」
親父さん 「う……うん。大丈夫だよ、リズたま。でもね、ちょっとね……」
ガクガクガクガク
親父さん 「すごく重いものを持ち上げるつもりで力を入れたら、予想以上に軽くてね……」
親父さん 「多分、なんだけど……」
ニコッ
親父さん 「腰、やっちゃった、かも……」
ガクッ……
理珠 「お、お父さん!? お父さん、大丈夫ですか!?」
親父さん 「あっ、だ、だめだよリズたま。いま揺すると、いたっ……ああああ……」
理珠 「お父さーーーん!!」
親父さん 「」
理珠 「お、お父さん……?」
理珠 「寸胴鍋、中身を別の段ボールに移したから軽いですよ、って言おうとしたんですが……」
理珠 「大丈夫、です、か……?」
親父さん 「う……うん。大丈夫だよ、リズたま。でもね、ちょっとね……」
ガクガクガクガク
親父さん 「すごく重いものを持ち上げるつもりで力を入れたら、予想以上に軽くてね……」
親父さん 「多分、なんだけど……」
ニコッ
親父さん 「腰、やっちゃった、かも……」
ガクッ……
理珠 「お、お父さん!? お父さん、大丈夫ですか!?」
親父さん 「あっ、だ、だめだよリズたま。いま揺すると、いたっ……ああああ……」
理珠 「お父さーーーん!!」
48:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:26:52 :ZJywfASQ
………………小美浪診療所
宗二朗 「……うん。間違いない。ぎっくり腰だよ」
親父さん 「うぅ……」
理珠 「ぎっくり腰……」
ホッ
理珠 「急に倒れたので、大病かと慌てましたが、ぎっくり腰ですか。良かった……」
宗二朗 「うーむ。そのぎっくり腰に対しての認識は改めた方がいいかもしれんな」
理珠 「?」
宗二朗 「たとえば、ぎっくり腰の患者に、こうしてでこぴんをしてみると、」
ピーン
親父さん 「ぐおお!?」 ビキッ 「うおおおおおおお!?」
宗二朗 「まずでこぴんの衝撃で腰が痛む。その生体反応で動いてしまってまた腰が痛む」
宗二朗 「振り子の振動と一緒だね。その痛み振幅は少しずつ小さくなるがなかなかなくならない」
理珠 「な、なるほど……。恐ろしいものなのですね、ぎっくり腰とは……」
親父さん 「せ、センセイよぉ……。俺の身体でぎっくり腰の解説をすんのはやめてくれよ……」
………………小美浪診療所
宗二朗 「……うん。間違いない。ぎっくり腰だよ」
親父さん 「うぅ……」
理珠 「ぎっくり腰……」
ホッ
理珠 「急に倒れたので、大病かと慌てましたが、ぎっくり腰ですか。良かった……」
宗二朗 「うーむ。そのぎっくり腰に対しての認識は改めた方がいいかもしれんな」
理珠 「?」
宗二朗 「たとえば、ぎっくり腰の患者に、こうしてでこぴんをしてみると、」
ピーン
親父さん 「ぐおお!?」 ビキッ 「うおおおおおおお!?」
宗二朗 「まずでこぴんの衝撃で腰が痛む。その生体反応で動いてしまってまた腰が痛む」
宗二朗 「振り子の振動と一緒だね。その痛み振幅は少しずつ小さくなるがなかなかなくならない」
理珠 「な、なるほど……。恐ろしいものなのですね、ぎっくり腰とは……」
親父さん 「せ、センセイよぉ……。俺の身体でぎっくり腰の解説をすんのはやめてくれよ……」
49:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:28:20 :ZJywfASQ
親父さん 「こんなの大したことねぇよ。明日まで寝りゃすぐ痛みもひくだろ……」
宗二朗 「だからそんな簡単なものじゃないと言っているんだがな」
宗二朗 「なんにせよ、しばらくまともに動けないだろう。二、三日の安静が必要だよ」
親父さん 「……安静ってのは、仕事をしても大丈夫なんだよな?」
宗二朗 「バカを言うんじゃない。仕事なんかさせられるわけないだろう」
親父さん 「!? いやいや、そりゃ困るよセンセイ! 明日は町内会のお祭りに出店しなきゃなんだ!」
宗二朗 「そう言われてもな」
ピーン
親父さん 「ぬおおおお!?」
宗二朗 「少し触るだけでそれだけ痛がっていたら、仕事なんてできるものではないと思うがね」
親父さん 「ぐおおお……」
宗二朗 「出店の方は諦めた方がいい。それから、お店の方も一週間ほどは休業した方がいいだろうな」
親父さん 「うぐ……でもな、そうそう簡単に仕事を休むわけにも……」
宗二朗 「腰は消耗品だ。軽く見てると一生仕事ができなくなるぞ?」
親父さん 「むぐっ……」
親父さん 「こんなの大したことねぇよ。明日まで寝りゃすぐ痛みもひくだろ……」
宗二朗 「だからそんな簡単なものじゃないと言っているんだがな」
宗二朗 「なんにせよ、しばらくまともに動けないだろう。二、三日の安静が必要だよ」
親父さん 「……安静ってのは、仕事をしても大丈夫なんだよな?」
宗二朗 「バカを言うんじゃない。仕事なんかさせられるわけないだろう」
親父さん 「!? いやいや、そりゃ困るよセンセイ! 明日は町内会のお祭りに出店しなきゃなんだ!」
宗二朗 「そう言われてもな」
ピーン
親父さん 「ぬおおおお!?」
宗二朗 「少し触るだけでそれだけ痛がっていたら、仕事なんてできるものではないと思うがね」
親父さん 「ぐおおお……」
宗二朗 「出店の方は諦めた方がいい。それから、お店の方も一週間ほどは休業した方がいいだろうな」
親父さん 「うぐ……でもな、そうそう簡単に仕事を休むわけにも……」
宗二朗 「腰は消耗品だ。軽く見てると一生仕事ができなくなるぞ?」
親父さん 「むぐっ……」
50:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:28:59 :ZJywfASQ
親父さん 「……分かったよ。センセイの言うとおりにするよ」
宗二朗 「うむ。よろしい」
宗二朗 「……と、言うわけで緒方さん。お父さんは二、三日うちで預かるよ」
宗二朗 「話を聞けばお母様も家にいらっしゃらないようだし、その方がいいだろう」
理珠 「すみません。ありがとうございます。父をよろしくお願いします」
親父さん 「リズたま!? リズたまは家にひとりで大丈夫なのかい!?」
理珠 「? 何の問題もありませんが?」
理珠 (……そう。家にひとりなのは問題ない。問題は……)
―――― 『うん! りっちゃん家のうどん楽しみだなぁ~』
―――― 『お祭りで食べると、味わいもヒトシオだよねぇ~』
理珠 「……楽しみにしてくれている人が、いますからね」
親父さん 「……? リズたま?」
理珠 「安心してください、お父さん! お店は無理でも、明日のお祭りくらいなら……」
理珠 「私ひとりでどうにか切り盛りしてみせますから!!」
親父さん 「……分かったよ。センセイの言うとおりにするよ」
宗二朗 「うむ。よろしい」
宗二朗 「……と、言うわけで緒方さん。お父さんは二、三日うちで預かるよ」
宗二朗 「話を聞けばお母様も家にいらっしゃらないようだし、その方がいいだろう」
理珠 「すみません。ありがとうございます。父をよろしくお願いします」
親父さん 「リズたま!? リズたまは家にひとりで大丈夫なのかい!?」
理珠 「? 何の問題もありませんが?」
理珠 (……そう。家にひとりなのは問題ない。問題は……)
―――― 『うん! りっちゃん家のうどん楽しみだなぁ~』
―――― 『お祭りで食べると、味わいもヒトシオだよねぇ~』
理珠 「……楽しみにしてくれている人が、いますからね」
親父さん 「……? リズたま?」
理珠 「安心してください、お父さん! お店は無理でも、明日のお祭りくらいなら……」
理珠 「私ひとりでどうにか切り盛りしてみせますから!!」
51:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:29:36 :ZJywfASQ
親父さん 「へ……? い、いや、リズたま……?」
理珠 「……と、なればボーッとしてはいられませんね。明日の仕込みもしておかないと」
理珠 「では、先輩のお父さん! 父をよろしくお願いします!」 ペコリ
宗二朗 「あ、ああ……」
親父さん 「リズたま? ち、ちょっと待って……――」
理珠 「――お父さんはちゃんと安静にしていてくださいね!」
タタタタタ……
親父さん 「リズたまーー!?」
ズキッ
親父さん 「あいたたたた……っ」
宗二朗 「……ふむ。娘からときどき話を聞くが、理珠さんは猪突猛進なところがあるな」
親父さん 「うるせぇやい。それもリズたまのいいところのひとつなんだよ」
宗二朗 「それはそうだろうな。父親の店のために、がんばろうと走り出すくらいなのだから」
親父さん 「……いや、まぁそりゃ嬉しいがな……。出店っていったって、リズたまひとりじゃさすがに……」
親父さん 「………………」
親父さん 「へ……? い、いや、リズたま……?」
理珠 「……と、なればボーッとしてはいられませんね。明日の仕込みもしておかないと」
理珠 「では、先輩のお父さん! 父をよろしくお願いします!」 ペコリ
宗二朗 「あ、ああ……」
親父さん 「リズたま? ち、ちょっと待って……――」
理珠 「――お父さんはちゃんと安静にしていてくださいね!」
タタタタタ……
親父さん 「リズたまーー!?」
ズキッ
親父さん 「あいたたたた……っ」
宗二朗 「……ふむ。娘からときどき話を聞くが、理珠さんは猪突猛進なところがあるな」
親父さん 「うるせぇやい。それもリズたまのいいところのひとつなんだよ」
宗二朗 「それはそうだろうな。父親の店のために、がんばろうと走り出すくらいなのだから」
親父さん 「……いや、まぁそりゃ嬉しいがな……。出店っていったって、リズたまひとりじゃさすがに……」
親父さん 「………………」
52:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:30:09 :ZJywfASQ
宗二朗 「……心配か?」
親父さん 「娘が心配じゃねえ父親なんかいるもんかよ」
宗二朗 「……ふむ。まったくその通りだな」
親父さん 「……なぁ、センセイ。少し頼まれてほしいんだが」
宗二朗 「? なんだ?」
親父さん 「電話を貸しちゃくれねぇか?」
宗二朗 「……わかった。子機を取ってくるから、ちょっと待っててくれ」
親父さん 「………………」
親父さん (……リズたまはナリは小せぇが、意志は強くて一度言い出したら聞かないタチだ)
親父さん (やると言ったらやるんだろう。明日の出店、自分ひとりで……)
親父さん (縁日の出店とはいえ、ひとりでやりきるのは無理だ……)
親父さん (情けねぇ話だが、小美浪センセイの言うとおり、俺にできることはなさそうだし……)
親父さん (ママは一日で帰ってこれる距離じゃねぇ)
親父さん (ああ、ちくしょう。情けねぇ。でも、背に腹は代えられねぇ……)
親父さん (あのヤロウに頼るしかねぇか……)
宗二朗 「……心配か?」
親父さん 「娘が心配じゃねえ父親なんかいるもんかよ」
宗二朗 「……ふむ。まったくその通りだな」
親父さん 「……なぁ、センセイ。少し頼まれてほしいんだが」
宗二朗 「? なんだ?」
親父さん 「電話を貸しちゃくれねぇか?」
宗二朗 「……わかった。子機を取ってくるから、ちょっと待っててくれ」
親父さん 「………………」
親父さん (……リズたまはナリは小せぇが、意志は強くて一度言い出したら聞かないタチだ)
親父さん (やると言ったらやるんだろう。明日の出店、自分ひとりで……)
親父さん (縁日の出店とはいえ、ひとりでやりきるのは無理だ……)
親父さん (情けねぇ話だが、小美浪センセイの言うとおり、俺にできることはなさそうだし……)
親父さん (ママは一日で帰ってこれる距離じゃねぇ)
親父さん (ああ、ちくしょう。情けねぇ。でも、背に腹は代えられねぇ……)
親父さん (あのヤロウに頼るしかねぇか……)
53:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:30:40 :ZJywfASQ
………………緒方うどん
理珠 「………………」
理珠 「……ふん!!」
グググググ……ッ!!!
理珠 「……うぅ」 ペタン
理珠 (ダメです。荷物をリュックに詰め直して見ましたが、重すぎます……)
理珠 (お父さんが入院ということは、車も出せないということですから、)
理珠 (全部の荷物を会場まで徒歩で運ばなければならないというのに、これでは……)
理珠 (食材から小物、寸胴鍋まで運ぶのは、さすがに難しいですよね)
理珠 (どうしたら……)
理珠 「………………」
理珠 (……冷静に考えてみれば、よしんば荷物を運び込めたとしても、)
理珠 (出店とは言え、ひとりでお店を切り盛りするコトなんて私にはできっこないですよね……)
………………緒方うどん
理珠 「………………」
理珠 「……ふん!!」
グググググ……ッ!!!
理珠 「……うぅ」 ペタン
理珠 (ダメです。荷物をリュックに詰め直して見ましたが、重すぎます……)
理珠 (お父さんが入院ということは、車も出せないということですから、)
理珠 (全部の荷物を会場まで徒歩で運ばなければならないというのに、これでは……)
理珠 (食材から小物、寸胴鍋まで運ぶのは、さすがに難しいですよね)
理珠 (どうしたら……)
理珠 「………………」
理珠 (……冷静に考えてみれば、よしんば荷物を運び込めたとしても、)
理珠 (出店とは言え、ひとりでお店を切り盛りするコトなんて私にはできっこないですよね……)
54:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:31:23 :ZJywfASQ
理珠 (……本当は分かっている。私は、意固地になっているだけです)
理珠 (できっこないことに固執して、なんとかしようとあがいているだけ……)
理珠 (……いつもそうです。私は、こうやって、できもしないことを……――)
成幸 「――お邪魔しまーす! 緒方、いるかー?」
理珠 「……へ?」
成幸 「お、いたいた。こんばんはだな、緒方」
理珠 「………………」
理珠 「ど、どうしてうちに成幸さんが!?」
成幸 「いやぁ、まぁ、色々あったというか、なんというか……」
成幸 「とりあえず説明は後だ。準備は終わってるんだな。じゃあ、早速荷物運び込むぞ」
理珠 「へ? へ? 運び込むって、どこに……」
真冬 「疑問。閉店中とはいえ、お店の前に車を止め続けていいものかしら?」
理珠 「……?」 ハッ 「きっ……桐須先生!? なぜ!?」
理珠 (……本当は分かっている。私は、意固地になっているだけです)
理珠 (できっこないことに固執して、なんとかしようとあがいているだけ……)
理珠 (……いつもそうです。私は、こうやって、できもしないことを……――)
成幸 「――お邪魔しまーす! 緒方、いるかー?」
理珠 「……へ?」
成幸 「お、いたいた。こんばんはだな、緒方」
理珠 「………………」
理珠 「ど、どうしてうちに成幸さんが!?」
成幸 「いやぁ、まぁ、色々あったというか、なんというか……」
成幸 「とりあえず説明は後だ。準備は終わってるんだな。じゃあ、早速荷物運び込むぞ」
理珠 「へ? へ? 運び込むって、どこに……」
真冬 「疑問。閉店中とはいえ、お店の前に車を止め続けていいものかしら?」
理珠 「……?」 ハッ 「きっ……桐須先生!? なぜ!?」
55:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:31:55 :ZJywfASQ
うるか 「やっほー! あたしたちもいるよ、リズりーん」
文乃 「やぁやぁ、困ってるって聞いたから来ちゃったよ」
あすみ 「よっ。親父さん大変だったな。手伝いに来たぜー」
理珠 「うるかさんに文乃先輩まで!? い、一体どうして……」
成幸 「まぁまぁ、細かいことは後だ。とりあえず荷物運んじゃうぞ」
うるか 「よしきた! うるかちゃんの力持ちなところ見せちゃうぞー!」
文乃 「じゃ、わたしはこの寸胴鍋運んじゃうねー」
理珠 「は、はい! お願いします、文乃」
理珠 (……? しかし、運び込むとは一体……。それに、さっき桐須先生は……)
―――― 『疑問。閉店中とはいえ、お店の前に車を止め続けていいものかしら?』
理珠 (車……?)
バーーーーン!!!
理珠 「……!? お店の前に本当に車が!?」
うるか 「やっほー! あたしたちもいるよ、リズりーん」
文乃 「やぁやぁ、困ってるって聞いたから来ちゃったよ」
あすみ 「よっ。親父さん大変だったな。手伝いに来たぜー」
理珠 「うるかさんに文乃先輩まで!? い、一体どうして……」
成幸 「まぁまぁ、細かいことは後だ。とりあえず荷物運んじゃうぞ」
うるか 「よしきた! うるかちゃんの力持ちなところ見せちゃうぞー!」
文乃 「じゃ、わたしはこの寸胴鍋運んじゃうねー」
理珠 「は、はい! お願いします、文乃」
理珠 (……? しかし、運び込むとは一体……。それに、さっき桐須先生は……)
―――― 『疑問。閉店中とはいえ、お店の前に車を止め続けていいものかしら?』
理珠 (車……?)
バーーーーン!!!
理珠 「……!? お店の前に本当に車が!?」
56:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:32:55 :ZJywfASQ
真冬 「ええ、私の車よ。小さく見えるでしょうけど、物はたくさん詰めるから安心してちょうだい」
理珠 「先生の車!? 先生、自動車をお持ちだったんですね。意外です……」
理珠 「……いや、というか、」
真冬 「? どうかしたかしら?」
理珠 「えっと、その……先生が、車を出してくださるということ、ですか……?」
真冬 「ええ。それが何か?」
理珠 「な、何かって……なぜ……?」
真冬 「あなたが困っているって聞いたからよ」
真冬 「それとも何かしら」 ジトーーッ 「私の運転が不安?」
真冬 「何なら今からあなたを乗せて走ってみせようかしら?」 フンスフンス
理珠 「ち、違います! 滅相もないです!」
理珠 「そうではなくて、その……先生もお忙しいでしょうし、あの……えっと……」
理珠 「………………」
理珠 「……すみません。ありがとうございます」 ペコリ
真冬 「ええ、私の車よ。小さく見えるでしょうけど、物はたくさん詰めるから安心してちょうだい」
理珠 「先生の車!? 先生、自動車をお持ちだったんですね。意外です……」
理珠 「……いや、というか、」
真冬 「? どうかしたかしら?」
理珠 「えっと、その……先生が、車を出してくださるということ、ですか……?」
真冬 「ええ。それが何か?」
理珠 「な、何かって……なぜ……?」
真冬 「あなたが困っているって聞いたからよ」
真冬 「それとも何かしら」 ジトーーッ 「私の運転が不安?」
真冬 「何なら今からあなたを乗せて走ってみせようかしら?」 フンスフンス
理珠 「ち、違います! 滅相もないです!」
理珠 「そうではなくて、その……先生もお忙しいでしょうし、あの……えっと……」
理珠 「………………」
理珠 「……すみません。ありがとうございます」 ペコリ
57:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:33:39 :ZJywfASQ
真冬 「……車を出すだけだもの。お礼を言われるようなことではないわ」
真冬 「……まぁ、本当であれば、利害関係者である生徒と私的な関係を持つのは厳禁だけれど」
真冬 「仕方ないわ。あれだけ頼み込まれてしまっては、ね」
理珠 「……?」
真冬 「ほら、緒方さんもどんどん運び入れなさい。忘れ物がないようにね」
理珠 「あ……は、はい!」
理珠 「………………」
―――― 『やぁやぁ、困ってるって聞いたから来ちゃったよ』
―――― 『あなたが困っているって聞いたからよ』
―――― 『仕方ないわ。あれだけ頼み込まれてしまっては、ね』
理珠 (……私の窮状を、誰かが皆さんに伝えた?)
理珠 (一体、誰が……いえ、) フルフル (そんなの考えるまでも、ないですよね)
成幸 「うおお……お、重い……」 フラフラ
理珠 「………………」 カァアアアア……
真冬 「……車を出すだけだもの。お礼を言われるようなことではないわ」
真冬 「……まぁ、本当であれば、利害関係者である生徒と私的な関係を持つのは厳禁だけれど」
真冬 「仕方ないわ。あれだけ頼み込まれてしまっては、ね」
理珠 「……?」
真冬 「ほら、緒方さんもどんどん運び入れなさい。忘れ物がないようにね」
理珠 「あ……は、はい!」
理珠 「………………」
―――― 『やぁやぁ、困ってるって聞いたから来ちゃったよ』
―――― 『あなたが困っているって聞いたからよ』
―――― 『仕方ないわ。あれだけ頼み込まれてしまっては、ね』
理珠 (……私の窮状を、誰かが皆さんに伝えた?)
理珠 (一体、誰が……いえ、) フルフル (そんなの考えるまでも、ないですよね)
成幸 「うおお……お、重い……」 フラフラ
理珠 「………………」 カァアアアア……
58:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:34:15 :ZJywfASQ
………………
真冬 「では、たしかに荷物を預かったわ。明日の朝、会場に直接運び入れるわね」
成幸 「先生、分かってますよね? 物積んでますからね? 割れ物もありますからね?」
成幸 「後生だから、安全運転でお願いしますね」
真冬 「失礼。君は私を一体なんだと思っているの?」
成幸 「………………」 ボソッ 「峠の走り屋……」
真冬 「……何か言ったかしら?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
成幸 「ひっ……。な、なんでもないです!」
真冬 「まったく……」 オホン 「では、また明日。緒方さん」
理珠 「はい! よろしくお願いします! 桐須先生!」
あすみ 「じゃ、アタシもそろそろお暇するか。後輩。今日の分と明日の分、貸しだからな。ちゃんと返せよー」
理珠 「……?」
成幸 「分かってますよ。ありがとうございます、先輩」
あすみ 「にひひ、ま、いいってことよ。緒方も、明日がんばれよ」
理珠 「先輩もありがとうございました。助かりました」
………………
真冬 「では、たしかに荷物を預かったわ。明日の朝、会場に直接運び入れるわね」
成幸 「先生、分かってますよね? 物積んでますからね? 割れ物もありますからね?」
成幸 「後生だから、安全運転でお願いしますね」
真冬 「失礼。君は私を一体なんだと思っているの?」
成幸 「………………」 ボソッ 「峠の走り屋……」
真冬 「……何か言ったかしら?」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!
成幸 「ひっ……。な、なんでもないです!」
真冬 「まったく……」 オホン 「では、また明日。緒方さん」
理珠 「はい! よろしくお願いします! 桐須先生!」
あすみ 「じゃ、アタシもそろそろお暇するか。後輩。今日の分と明日の分、貸しだからな。ちゃんと返せよー」
理珠 「……?」
成幸 「分かってますよ。ありがとうございます、先輩」
あすみ 「にひひ、ま、いいってことよ。緒方も、明日がんばれよ」
理珠 「先輩もありがとうございました。助かりました」
59:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:35:11 :ZJywfASQ
うるか 「じゃ、リズりん。明日も出店手伝いに行くかんね!」
文乃 「わたしも行くよ。明日もがんばろうね!」
理珠 「すみません。助かります。バイト代は後ほどちゃんとお支払いしますので……」
うるか 「そんなん気にしなくていいってー! あたしたち友達じゃん!」
理珠 「うるかさん……」
文乃 「じゃ、また明日ねー!」
うるか 「ばいばい、リズりん。成幸もね」
成幸 「おう。ふたりとも、明日もよろしくな!」
理珠 「あ……よろしくお願いします!」
理珠 「………………」
成幸 「………………」
成幸 「……じゃ、俺も帰るな。また明日……――」
――――――ムンズ……
理珠 「……帰るなら、せめて、」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「説明してからにしてくれませんか?」
うるか 「じゃ、リズりん。明日も出店手伝いに行くかんね!」
文乃 「わたしも行くよ。明日もがんばろうね!」
理珠 「すみません。助かります。バイト代は後ほどちゃんとお支払いしますので……」
うるか 「そんなん気にしなくていいってー! あたしたち友達じゃん!」
理珠 「うるかさん……」
文乃 「じゃ、また明日ねー!」
うるか 「ばいばい、リズりん。成幸もね」
成幸 「おう。ふたりとも、明日もよろしくな!」
理珠 「あ……よろしくお願いします!」
理珠 「………………」
成幸 「………………」
成幸 「……じゃ、俺も帰るな。また明日……――」
――――――ムンズ……
理珠 「……帰るなら、せめて、」 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!! 「説明してからにしてくれませんか?」
60:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:35:41 :ZJywfASQ
………………少し前 唯我家
成幸 (受験ももう大詰めだ。反復練習を繰り返していかないとな……)
花枝 「成幸ー、電話よー」 ヒョコッ 「緒方さん? からよ」
成幸 「ああ、ありがと」
成幸 (緒方から電話……? あいつだったらメッセージで済ませそうなもんだけど……)
成幸 「もしもし?」
親父さん 『おう、センセイか。夜分にすまねぇな』
成幸 「へ……? 親父さん!?」
親父さん 『何度も言うが、オメェに親父さんと呼ばれる筋合いはね……いててて……』
成幸 「? どうかしました? 大丈夫ですか?」
親父さん 『おう。実はちょっと腰をやっちまってな……ぎっくり腰ってやつだ』
親父さん 『……でよぅ、センセイ。頼みてぇことがあるんだ』
親父さん 『恥ずかしい話なんだが、頼れる奴がオメェしかいねぇ』
親父さん 『だから、恥を承知で、頼む! リズたまを助けてやってくれねぇか!』
………………少し前 唯我家
成幸 (受験ももう大詰めだ。反復練習を繰り返していかないとな……)
花枝 「成幸ー、電話よー」 ヒョコッ 「緒方さん? からよ」
成幸 「ああ、ありがと」
成幸 (緒方から電話……? あいつだったらメッセージで済ませそうなもんだけど……)
成幸 「もしもし?」
親父さん 『おう、センセイか。夜分にすまねぇな』
成幸 「へ……? 親父さん!?」
親父さん 『何度も言うが、オメェに親父さんと呼ばれる筋合いはね……いててて……』
成幸 「? どうかしました? 大丈夫ですか?」
親父さん 『おう。実はちょっと腰をやっちまってな……ぎっくり腰ってやつだ』
親父さん 『……でよぅ、センセイ。頼みてぇことがあるんだ』
親父さん 『恥ずかしい話なんだが、頼れる奴がオメェしかいねぇ』
親父さん 『だから、恥を承知で、頼む! リズたまを助けてやってくれねぇか!』
61:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:36:16 :ZJywfASQ
………………
成幸 「……って、親父さんに電話で頼まれちゃってさ」
理珠 「お父さんがそんなことを……」
理珠 「すみません。我が家の事情に巻き込んで、成幸さんにご迷惑を……」
成幸 「まぁ、あの親父さんにあんなに必死で頼み込まれたら断れないよ」
成幸 「……で、物を運ぶ必要があるみたいだから、俺ひとりじゃ不安で、古橋たちを呼んで、」
成幸 「タクシーを借りても良かったんだけど、桐須先生に頼んでみたら車出してくれるって言うしさ」
成幸 「だから、こうやってみんなでここに来たんだよ」
理珠 「成幸さんが皆さんに頼み込んでくれたんですね。助かりました」
理珠 「本当に……ひとりでどうしたらいいか分からなくなっていたので……」
成幸 「みんな快く引き受けてくれたよ。だからお前が気にする必要はないと思うぞ」
成幸 「俺も、明日は出店手伝うからさ。みんなで出店がんばろうな」
理珠 「へ……? で、でも、成幸さん、明日はバイトがあるのでは……?」
成幸 「……あー、まぁ、そっちもなんとかなるから大丈夫だよ」
………………
成幸 「……って、親父さんに電話で頼まれちゃってさ」
理珠 「お父さんがそんなことを……」
理珠 「すみません。我が家の事情に巻き込んで、成幸さんにご迷惑を……」
成幸 「まぁ、あの親父さんにあんなに必死で頼み込まれたら断れないよ」
成幸 「……で、物を運ぶ必要があるみたいだから、俺ひとりじゃ不安で、古橋たちを呼んで、」
成幸 「タクシーを借りても良かったんだけど、桐須先生に頼んでみたら車出してくれるって言うしさ」
成幸 「だから、こうやってみんなでここに来たんだよ」
理珠 「成幸さんが皆さんに頼み込んでくれたんですね。助かりました」
理珠 「本当に……ひとりでどうしたらいいか分からなくなっていたので……」
成幸 「みんな快く引き受けてくれたよ。だからお前が気にする必要はないと思うぞ」
成幸 「俺も、明日は出店手伝うからさ。みんなで出店がんばろうな」
理珠 「へ……? で、でも、成幸さん、明日はバイトがあるのでは……?」
成幸 「……あー、まぁ、そっちもなんとかなるから大丈夫だよ」
62:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:36:49 :ZJywfASQ
理珠 「なんとかって……」
成幸 「昼は服屋でバイトする予定だったんだけど、代打を母さんに頼んだし」
―――― 花枝 『えーっ。私明日は一日休みの予定だったのにー』 ブーブー
―――― 花枝 『ま、可愛い息子の頼みじゃ仕方ないわね。引き受けてあげる』
―――― 花枝 『ふふっ。それに、可愛いりっちゃんのためじゃ、ねぇ?』
成幸 (なぜにやついていたのかは分からないが、オーケーしてくれて助かった……)
成幸 「夜はハイステージでバイトだったけど、そっちはあしゅみー先輩に頼んだから」
―――― あすみ 『仕方ねーなぁ。代わってやるよ』
―――― あすみ 『そっ……そんかわし、今度、また勉強教えてくれよ』
―――― あすみ 『へ? いつものことじゃないですか、だって? ばかっ、ちげーよ』
―――― あすみ 『久しぶりに……ふっ、ふたりきりで、って言ってんだよ……///』
成幸 (なぜ先輩が顔を真っ赤にしていたのかは分からんが、とにかく先輩に感謝だな……)
理珠 「………………」
理珠 「なんとかって……」
成幸 「昼は服屋でバイトする予定だったんだけど、代打を母さんに頼んだし」
―――― 花枝 『えーっ。私明日は一日休みの予定だったのにー』 ブーブー
―――― 花枝 『ま、可愛い息子の頼みじゃ仕方ないわね。引き受けてあげる』
―――― 花枝 『ふふっ。それに、可愛いりっちゃんのためじゃ、ねぇ?』
成幸 (なぜにやついていたのかは分からないが、オーケーしてくれて助かった……)
成幸 「夜はハイステージでバイトだったけど、そっちはあしゅみー先輩に頼んだから」
―――― あすみ 『仕方ねーなぁ。代わってやるよ』
―――― あすみ 『そっ……そんかわし、今度、また勉強教えてくれよ』
―――― あすみ 『へ? いつものことじゃないですか、だって? ばかっ、ちげーよ』
―――― あすみ 『久しぶりに……ふっ、ふたりきりで、って言ってんだよ……///』
成幸 (なぜ先輩が顔を真っ赤にしていたのかは分からんが、とにかく先輩に感謝だな……)
理珠 「………………」
63:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:37:24 :ZJywfASQ
成幸 「……ってなわけで、明日は空けておいたから大丈夫だ。俺も手伝うよ」
理珠 「………………」 サー--ーッ……
成幸 「……? 緒方? 顔色悪いけど、どうかしたか?」
理珠 「……す、すみません、成幸さん」
理珠 「私、成幸さんにとんでもないご迷惑を……。本当にごめんなさい!」
成幸 「緒方……?」
理珠 「私、できると、思ったんです」
理珠 「出店くらいなら、ひとりでも大丈夫だって。お父さんがいなくても、私ひとりで……」
理珠 「でも……」
理珠 「……可笑しいですよね。私ひとりじゃ、荷物を詰めたリュックを運ぶことすらできませんでした」
理珠 「でも諦めることもできなくて、どうしようと悩むことしかできなくて……」
理珠 「成幸さんたちが来てくれなければ、私は……」
理珠 「私は今も、何もできず、うずくまっていたんでしょうね……」
成幸 「………………」
成幸 「……ってなわけで、明日は空けておいたから大丈夫だ。俺も手伝うよ」
理珠 「………………」 サー--ーッ……
成幸 「……? 緒方? 顔色悪いけど、どうかしたか?」
理珠 「……す、すみません、成幸さん」
理珠 「私、成幸さんにとんでもないご迷惑を……。本当にごめんなさい!」
成幸 「緒方……?」
理珠 「私、できると、思ったんです」
理珠 「出店くらいなら、ひとりでも大丈夫だって。お父さんがいなくても、私ひとりで……」
理珠 「でも……」
理珠 「……可笑しいですよね。私ひとりじゃ、荷物を詰めたリュックを運ぶことすらできませんでした」
理珠 「でも諦めることもできなくて、どうしようと悩むことしかできなくて……」
理珠 「成幸さんたちが来てくれなければ、私は……」
理珠 「私は今も、何もできず、うずくまっていたんでしょうね……」
成幸 「………………」
64:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:38:25 :ZJywfASQ
理珠 「……成幸さんたちが来てくれて、“良かった” と思いました」
理珠 「“助かった” って。きっと、成幸さんたちがなんとかしてくれる、って」
理珠 「そして実際、なんとかなるような気がしてきました」
理珠 「……その裏で、成幸さんが方々にお願いや頼み事をしてくれていたというのに、」
理珠 「それを薄々勘づいていながら、大したことだと考えていなかった……」
理珠 「……いつもそうです。私は、私ひとりで、問題を解決することができない」
理珠 「だから、また私は……こうやって、迷惑を……――」
成幸 「――……それは違うよ、緒方」
理珠 「え……?」
成幸 「……まぁ、そりゃ、色んな人に声かけて、集まってもらったり、バイト代わってもらったり……」
成幸 「大変じゃなかったって言えばウソになるけどさ」 クスッ
成幸 「でも、そうじゃないんだよ。“なんとかなる” と思えるのは、それが理由じゃないんだよ」
成幸 「それはさ、お前が諦めずがんばってきたからだろ?」
理珠 「……成幸さんたちが来てくれて、“良かった” と思いました」
理珠 「“助かった” って。きっと、成幸さんたちがなんとかしてくれる、って」
理珠 「そして実際、なんとかなるような気がしてきました」
理珠 「……その裏で、成幸さんが方々にお願いや頼み事をしてくれていたというのに、」
理珠 「それを薄々勘づいていながら、大したことだと考えていなかった……」
理珠 「……いつもそうです。私は、私ひとりで、問題を解決することができない」
理珠 「だから、また私は……こうやって、迷惑を……――」
成幸 「――……それは違うよ、緒方」
理珠 「え……?」
成幸 「……まぁ、そりゃ、色んな人に声かけて、集まってもらったり、バイト代わってもらったり……」
成幸 「大変じゃなかったって言えばウソになるけどさ」 クスッ
成幸 「でも、そうじゃないんだよ。“なんとかなる” と思えるのは、それが理由じゃないんだよ」
成幸 「それはさ、お前が諦めずがんばってきたからだろ?」
65:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:38:57 :ZJywfASQ
理珠 「……へ?」
成幸 「緒方が諦めなかったから、親父さんも俺に頼み込んで来たんだろ?」
成幸 「緒方が諦めなかったから、今日だって荷物の積み込みが終わったんだろ?」
成幸 「緒方がいつもがんばってるから、古橋やうるかも、明日手伝おうって思うんだろ」
成幸 「先輩だって母さんだってそうだよ。お前の名前を出したら、二つ返事でオーケーしてくれたんだぞ?」
成幸 「あの “氷の女王” が、生徒のために車を出すと思うか?」
成幸 「お前が何を言ったって諦めないって知ってるからこそ、先生は車を出してくれるんだろ」
理珠 「………………」
成幸 「……たしかに、今回、色んな人に迷惑をかけてしまったかもしれないな」
成幸 「でも、それはみんな分かってて手伝ってくれてるんだよ」
成幸 「お前に協力してあげたい……助けてあげたいって、そう思ってくれてるんだよ」
成幸 「だからさ、そんな気に病むことはないよ。お前は明日、胸張って、」 ニコッ
―――― 『緒方うどんの美味しさをもっと多くの人に知ってもらうためにがんばります!』
成幸 「緒方うどんのうまさを祭りで知ってもらうために、がんばればいいんだよ」
理珠 「……へ?」
成幸 「緒方が諦めなかったから、親父さんも俺に頼み込んで来たんだろ?」
成幸 「緒方が諦めなかったから、今日だって荷物の積み込みが終わったんだろ?」
成幸 「緒方がいつもがんばってるから、古橋やうるかも、明日手伝おうって思うんだろ」
成幸 「先輩だって母さんだってそうだよ。お前の名前を出したら、二つ返事でオーケーしてくれたんだぞ?」
成幸 「あの “氷の女王” が、生徒のために車を出すと思うか?」
成幸 「お前が何を言ったって諦めないって知ってるからこそ、先生は車を出してくれるんだろ」
理珠 「………………」
成幸 「……たしかに、今回、色んな人に迷惑をかけてしまったかもしれないな」
成幸 「でも、それはみんな分かってて手伝ってくれてるんだよ」
成幸 「お前に協力してあげたい……助けてあげたいって、そう思ってくれてるんだよ」
成幸 「だからさ、そんな気に病むことはないよ。お前は明日、胸張って、」 ニコッ
―――― 『緒方うどんの美味しさをもっと多くの人に知ってもらうためにがんばります!』
成幸 「緒方うどんのうまさを祭りで知ってもらうために、がんばればいいんだよ」
66:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:39:34 :ZJywfASQ
理珠 「成幸さん……」
グスッ
理珠 (……私は、本当に果報者です)
理珠 (文乃にうるかさん、小美浪先輩、桐須先生……。たくさんの人に気にかけてもらって……)
理珠 (それが情けなくもあるのですが、それでも……)
―――― 『でも、それはみんな分かってて手伝ってくれてるんだよ』
―――― 『お前に協力してあげたい……助けてあげたいって、そう思ってくれてるんだよ』
理珠 (……その気持ちに応えるために、)
理珠 「……そうですね」
クスッ
理珠 「皆さんの協力に報いるために、最高のうどんを提供しなければなりませんね!」
成幸 「おお! その意気だぞ、緒方!」
理珠 「成幸さん……」
グスッ
理珠 (……私は、本当に果報者です)
理珠 (文乃にうるかさん、小美浪先輩、桐須先生……。たくさんの人に気にかけてもらって……)
理珠 (それが情けなくもあるのですが、それでも……)
―――― 『でも、それはみんな分かってて手伝ってくれてるんだよ』
―――― 『お前に協力してあげたい……助けてあげたいって、そう思ってくれてるんだよ』
理珠 (……その気持ちに応えるために、)
理珠 「……そうですね」
クスッ
理珠 「皆さんの協力に報いるために、最高のうどんを提供しなければなりませんね!」
成幸 「おお! その意気だぞ、緒方!」
67:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:40:11 :ZJywfASQ
理珠 (そして……)
カァアアアア……
理珠 (私のために、たくさんがんばってくれた、この人のために……)
成幸 「明日、がんばろうな、緒方!」
理珠 「はいっ! 成幸さん!」
理珠 (そう。私の……)
理珠 (私の、大好きな、この人の、ために……)
理珠 (そして……)
カァアアアア……
理珠 (私のために、たくさんがんばってくれた、この人のために……)
成幸 「明日、がんばろうな、緒方!」
理珠 「はいっ! 成幸さん!」
理珠 (そう。私の……)
理珠 (私の、大好きな、この人の、ために……)
68:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:40:55 :ZJywfASQ
………………当日
「かけうどん二杯くださーい!」
「こっちは三杯ください!」
文乃 「はーい! 少々お待ちください!」
文乃 「りっちゃん、うるかちゃん! かけうどん五杯よろしく!」
うるか 「あいよー! 任せてー! ……ん、リズりん、器におだしいれたよ!」
理珠 「はい、うどんはもうゆであがります!」
成幸 (さすが緒方うどんの出店。夏に引き続き大人気だな……)
成幸 「600円ちょうど、お預かりします!」
成幸 (……よしっ! 俺も気合いいれてがんばらないと!)
成幸 「ありがとうございましたー!」
………………当日
「かけうどん二杯くださーい!」
「こっちは三杯ください!」
文乃 「はーい! 少々お待ちください!」
文乃 「りっちゃん、うるかちゃん! かけうどん五杯よろしく!」
うるか 「あいよー! 任せてー! ……ん、リズりん、器におだしいれたよ!」
理珠 「はい、うどんはもうゆであがります!」
成幸 (さすが緒方うどんの出店。夏に引き続き大人気だな……)
成幸 「600円ちょうど、お預かりします!」
成幸 (……よしっ! 俺も気合いいれてがんばらないと!)
成幸 「ありがとうございましたー!」
69:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:41:42 :ZJywfASQ
………………
うるか 「ふはーっ。つかれたねー」
文乃 「少しお客さんも落ち着いたかな。お昼時は大変だったねぇ」
成幸 「いつもはこれを親父さんとふたりでやってるんだよな。すごいな、緒方は」
理珠 「いえ。今回は皆さんが手伝ってくれたので、すごく楽です」
理珠 「本当にありがとうございます!」 ペコリ
うるか 「へへーっ。リズりんのためならこれくらい大したことないよー、だ」
理珠 「しばらくは混まないと思いますから、皆さんはお祭りを回ってきて大丈夫ですよ」
理珠 「店には私がいるので」
文乃 「えっ、でも……」
成幸 「………………」 (緒方なりの精一杯の気遣いだろうな。なら……)
成幸 「そうだな。ふたりはお祭り回ってきたらいいよ。俺も緒方と一緒に店番してるからさ」
理珠 「えっ……? で、でも、成幸さんも……」
成幸 「俺は緒方うどんの店員でもあるんだから、いいんだよ」 ニッ
成幸 「ほら、せっかく緒方がいって言ってくれてるんだ。うるかと古橋はちょっと休憩してこいよ」
………………
うるか 「ふはーっ。つかれたねー」
文乃 「少しお客さんも落ち着いたかな。お昼時は大変だったねぇ」
成幸 「いつもはこれを親父さんとふたりでやってるんだよな。すごいな、緒方は」
理珠 「いえ。今回は皆さんが手伝ってくれたので、すごく楽です」
理珠 「本当にありがとうございます!」 ペコリ
うるか 「へへーっ。リズりんのためならこれくらい大したことないよー、だ」
理珠 「しばらくは混まないと思いますから、皆さんはお祭りを回ってきて大丈夫ですよ」
理珠 「店には私がいるので」
文乃 「えっ、でも……」
成幸 「………………」 (緒方なりの精一杯の気遣いだろうな。なら……)
成幸 「そうだな。ふたりはお祭り回ってきたらいいよ。俺も緒方と一緒に店番してるからさ」
理珠 「えっ……? で、でも、成幸さんも……」
成幸 「俺は緒方うどんの店員でもあるんだから、いいんだよ」 ニッ
成幸 「ほら、せっかく緒方がいって言ってくれてるんだ。うるかと古橋はちょっと休憩してこいよ」
70:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:42:19 :ZJywfASQ
………………
―――― 文乃 『じゃあ、お言葉に甘えてお祭りちょっと回ってくるけど、』
―――― うるか 『もしお客さんたくさん来たら、すぐ連絡ちょうだいね!』
成幸 (……本当に義理堅い奴らだな。あの様子じゃ、すぐ戻ってきそうだな)
理珠 「………………」
理珠 「……あ、あの、成幸さん」
成幸 「うん? どうかしたか?」
理珠 「成幸さんは良かったんですか。お祭り、回らなくて……」
成幸 「……ん、まぁ、お祭りって誘惑が多いしな。散財するわけにはいかないから、俺は行かなくていいんだ」
理珠 「そう、ですか……」
理珠 (……本当に優しい人です。私を気遣って、そんな風に言ってくれるんですから)
成幸 「でも良かったな。ちゃんと出店できて。うどんも美味しいって大好評だな」
理珠 「はい。本当に良かったです。皆さんのおかげです」
………………
―――― 文乃 『じゃあ、お言葉に甘えてお祭りちょっと回ってくるけど、』
―――― うるか 『もしお客さんたくさん来たら、すぐ連絡ちょうだいね!』
成幸 (……本当に義理堅い奴らだな。あの様子じゃ、すぐ戻ってきそうだな)
理珠 「………………」
理珠 「……あ、あの、成幸さん」
成幸 「うん? どうかしたか?」
理珠 「成幸さんは良かったんですか。お祭り、回らなくて……」
成幸 「……ん、まぁ、お祭りって誘惑が多いしな。散財するわけにはいかないから、俺は行かなくていいんだ」
理珠 「そう、ですか……」
理珠 (……本当に優しい人です。私を気遣って、そんな風に言ってくれるんですから)
成幸 「でも良かったな。ちゃんと出店できて。うどんも美味しいって大好評だな」
理珠 「はい。本当に良かったです。皆さんのおかげです」
71:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:43:06 :ZJywfASQ
成幸 「でも、ほんと朝はヒヤヒヤしたな。桐須先生の車の中で小物類が散乱しててさ」
理珠 「ふふ、そうですね。幸い、割れ物も無事でしたけど」
理珠 「桐須先生はショックを受けていましたね」
成幸 「“驚愕。私の運転って、そんなにアレなのかしら……” 。ってな」 クスクス
理珠 「あっ、今の声真似ちょっと似てました」
成幸 「そうか? ははっ」
理珠 「ふふふ……」
成幸 「………………」
理珠 「………………」
ドキドキドキドキ……
―――― ((私のために、たくさんがんばってくれた、この人のために……))
―――― ((私の、大好きな、この人の、ために……))
理珠 (不思議な感覚です。ドキドキするだけでなく、どこか、落ち着く……)
理珠 (成幸さんの隣にいると、何とも形容しがたい、幸せな気持ちになります)
成幸 「でも、ほんと朝はヒヤヒヤしたな。桐須先生の車の中で小物類が散乱しててさ」
理珠 「ふふ、そうですね。幸い、割れ物も無事でしたけど」
理珠 「桐須先生はショックを受けていましたね」
成幸 「“驚愕。私の運転って、そんなにアレなのかしら……” 。ってな」 クスクス
理珠 「あっ、今の声真似ちょっと似てました」
成幸 「そうか? ははっ」
理珠 「ふふふ……」
成幸 「………………」
理珠 「………………」
ドキドキドキドキ……
―――― ((私のために、たくさんがんばってくれた、この人のために……))
―――― ((私の、大好きな、この人の、ために……))
理珠 (不思議な感覚です。ドキドキするだけでなく、どこか、落ち着く……)
理珠 (成幸さんの隣にいると、何とも形容しがたい、幸せな気持ちになります)
72:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:43:44 :ZJywfASQ
理珠 (私は……)
―――― 『当然です 何故私が恋愛などしなければならないのですか』
―――― 『好いた惚れたと曖昧なものに過分なエネルギーを割くなど非効率の極みです』
理珠 (非効率であろうと、なんであろうと、この気持ちは、もう……)
理珠 (きっと、止められるものでは、ないから……)
ドキドキドキドキ……
理珠 「……あの、成幸さん」
成幸 「ん?」
理珠 「私、本当に、成幸さんに感謝しているんです」
成幸 「へ……? い、いきなりなんだよ。照れるな」
理珠 「四月からずっと、成幸さんには本当にお世話になりっぱなしです」
理珠 「……それこそ、もう、成幸さん抜きでは、生きていけないかもしれないくらいに」
成幸 「……?」
理珠 (私は……)
―――― 『当然です 何故私が恋愛などしなければならないのですか』
―――― 『好いた惚れたと曖昧なものに過分なエネルギーを割くなど非効率の極みです』
理珠 (非効率であろうと、なんであろうと、この気持ちは、もう……)
理珠 (きっと、止められるものでは、ないから……)
ドキドキドキドキ……
理珠 「……あの、成幸さん」
成幸 「ん?」
理珠 「私、本当に、成幸さんに感謝しているんです」
成幸 「へ……? い、いきなりなんだよ。照れるな」
理珠 「四月からずっと、成幸さんには本当にお世話になりっぱなしです」
理珠 「……それこそ、もう、成幸さん抜きでは、生きていけないかもしれないくらいに」
成幸 「……?」
73:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:44:39 :ZJywfASQ
理珠 「だから、その……」 (そう。だから。私は……)
理珠 「……もし、成幸さんさえよろしければ、これからもずっと、私のそばにいてください」
成幸 「え……?」
カァアアアア……
成幸 「あっ……う、嬉しいな。そういう風に、言ってもらえるのは……///」
成幸 「こちらこそ、よろしくな。俺も、お前と友達になれてよかったよ」
理珠 「………………」 クスッ 「……私が言うのも何ですが、本当に、成幸さんはもっと人の心を理解する訓練が必要ですね」
理珠 「仕方ありません。私が立派な大学生になったら、成幸さんに心理学のイロハをたたき込んであげます」
理珠 (……今は、“友達” でいい)
―――― 『……今は もっと知りたい 人の気持ち 自分の気持ち』
―――― 『成幸さんの………………』
理珠 (でも、いつか……)
理珠 「……そのときは、私の気持ち、知ってもらいますからね。成幸さんっ」
おわり
理珠 「だから、その……」 (そう。だから。私は……)
理珠 「……もし、成幸さんさえよろしければ、これからもずっと、私のそばにいてください」
成幸 「え……?」
カァアアアア……
成幸 「あっ……う、嬉しいな。そういう風に、言ってもらえるのは……///」
成幸 「こちらこそ、よろしくな。俺も、お前と友達になれてよかったよ」
理珠 「………………」 クスッ 「……私が言うのも何ですが、本当に、成幸さんはもっと人の心を理解する訓練が必要ですね」
理珠 「仕方ありません。私が立派な大学生になったら、成幸さんに心理学のイロハをたたき込んであげます」
理珠 (……今は、“友達” でいい)
―――― 『……今は もっと知りたい 人の気持ち 自分の気持ち』
―――― 『成幸さんの………………』
理珠 (でも、いつか……)
理珠 「……そのときは、私の気持ち、知ってもらいますからね。成幸さんっ」
おわり
74:以下、名無しが深夜にお送りします:2019/05/06(月) 23:45:27 :ZJywfASQ
………………幕間 『ごめん紗和子ちゃん』
紗和子 「……えぐっ、ぐすっ……えぐっ……ひぐっ……」
文乃 「だ、だからごめんってばー、紗和子ちゃん」
うるか 「ごめんねぇ、さわちん。てっきり成幸が誘ってるもんだと思ってさ……」
紗和子 「ひぐっ……えぐっ……おっ……緒方理珠の、危機に駆けつけられない、なんて……」
紗和子 「大親友、失格、だわっ……」
紗和子 「かっ……かくなる……ぐすっ……上は……しんで詫びるしか……」
文乃 「め……めんどくせぇ、だよ……」 (よしよし、紗和子ちゃん。大丈夫だよ)
うるか 「文乃っち、言葉と心の声が逆になってるよ……」
おわり
………………幕間 『ごめん紗和子ちゃん』
紗和子 「……えぐっ、ぐすっ……えぐっ……ひぐっ……」
文乃 「だ、だからごめんってばー、紗和子ちゃん」
うるか 「ごめんねぇ、さわちん。てっきり成幸が誘ってるもんだと思ってさ……」
紗和子 「ひぐっ……えぐっ……おっ……緒方理珠の、危機に駆けつけられない、なんて……」
紗和子 「大親友、失格、だわっ……」
紗和子 「かっ……かくなる……ぐすっ……上は……しんで詫びるしか……」
文乃 「め……めんどくせぇ、だよ……」 (よしよし、紗和子ちゃん。大丈夫だよ)
うるか 「文乃っち、言葉と心の声が逆になってるよ……」
おわり
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