424:◆Try7rHwMFw:2018/09/27(木)20:56:44 :P1O
「はぁぁ、つっかれたでち……」
口から白い煙のようなものを吐きながら、ゴーヤがふらふらと執務室のソファーに倒れ込む。
「大丈夫か?」
「大丈夫なわけないでち!一昨日は金剛、昨日は鹿島。で今日は時雨でち。
時雨、『提督は、渡さないよ……』とかハイライトの消えた目で言ってきやがったでち。久々に心から恐怖を覚えたでちよ……」
ゴーヤはうつ伏せのまま動かない。余程キツいようだ。
カミングアウトの日以来、ゴーヤに色々な勝負を挑む艦娘が出てきた。
例えば金剛は紅茶の入れ方勝負。鹿島は料理勝負(最初奴は早逝かせ勝負を申し出てきたが、さすがに全力で拒否した)。
一応両方ともゴーヤが勝ったが、「負けるわけにはいかんのでち……」と相当必死な様子だ。どうも提督LOVE勢とは何かしらの裏取引があるらしい。
そして今日の時雨の場合は、演習形式の「死合い」だ。一応ゴーヤが勝ったが、ゴーヤは手加減してるのに時雨はガチで殺しに来ていた。ありゃあさすがにマズイ。
「あー、なんつーか、すまん。聞き分けのない部下で」
「時雨が病んでるって噂は聞いてたでち。……でもあそこまでガチとか聞いてないでち。さすがに移籍させるよね?」
俺ははーっっと特大の溜め息をついた。
「あれで駆逐艦のWエースじゃなきゃな。まあ上には相談するし更正プログラムも受けさせるが、子供ってのは諦めが悪くて困るな」
「大人にも諦めが悪いの、いそうでち……。まあいいでち。少し寝るでち」
ゴーヤがそれから数秒ですうすうと寝息をたて始めたその時。
「おーいしれー!いるいるー??」
「しれぇ!雪風、ただいま戻りました!」
空気を読まずに大声を張り上げ、二人の少女が入ってきた。
「はぁぁ、つっかれたでち……」
口から白い煙のようなものを吐きながら、ゴーヤがふらふらと執務室のソファーに倒れ込む。
「大丈夫か?」
「大丈夫なわけないでち!一昨日は金剛、昨日は鹿島。で今日は時雨でち。
時雨、『提督は、渡さないよ……』とかハイライトの消えた目で言ってきやがったでち。久々に心から恐怖を覚えたでちよ……」
ゴーヤはうつ伏せのまま動かない。余程キツいようだ。
カミングアウトの日以来、ゴーヤに色々な勝負を挑む艦娘が出てきた。
例えば金剛は紅茶の入れ方勝負。鹿島は料理勝負(最初奴は早逝かせ勝負を申し出てきたが、さすがに全力で拒否した)。
一応両方ともゴーヤが勝ったが、「負けるわけにはいかんのでち……」と相当必死な様子だ。どうも提督LOVE勢とは何かしらの裏取引があるらしい。
そして今日の時雨の場合は、演習形式の「死合い」だ。一応ゴーヤが勝ったが、ゴーヤは手加減してるのに時雨はガチで殺しに来ていた。ありゃあさすがにマズイ。
「あー、なんつーか、すまん。聞き分けのない部下で」
「時雨が病んでるって噂は聞いてたでち。……でもあそこまでガチとか聞いてないでち。さすがに移籍させるよね?」
俺ははーっっと特大の溜め息をついた。
「あれで駆逐艦のWエースじゃなきゃな。まあ上には相談するし更正プログラムも受けさせるが、子供ってのは諦めが悪くて困るな」
「大人にも諦めが悪いの、いそうでち……。まあいいでち。少し寝るでち」
ゴーヤがそれから数秒ですうすうと寝息をたて始めたその時。
「おーいしれー!いるいるー??」
「しれぇ!雪風、ただいま戻りました!」
空気を読まずに大声を張り上げ、二人の少女が入ってきた。
【画像】主婦「マジで旦那ぶっ殺すぞおいこらクソオスが」
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425:◆Try7rHwMFw:2018/09/27(木)21:15:35 :P1O
「だぁぁぁぁ!!誰でち!!休ませろでち!!」
「あ、ゴーヤさん。こんちはー!それはそうと、しれーしれー、かまえかまえー」
俺は頭に乗ろうとする時津風を、「とうっ」と軽く放り投げた。奴は器用に1回転して着地する。
「あー、しれーひどいー。大切な部下をそんな風に扱うなんて、ぎゃくたいだぎゃくたいだー」
「お前なあ、状況考えろよ……秘書艦のゴーヤが疲れて寝ようとしてるわけだぞ?空気読めや……」
「えーつまんないのー。ていうか、お願いがあってきたのにねー、雪風」
「そうです!でもお邪魔なら改めます!では、失礼します!」
ゴーヤが苦り切った顔で言う。
「あ"ー、もうどうでもいいでち。でもボリュームは下げるでち。うるさくてかなわんでち……」
「そうでしたか!!では!!」
雪風はぴょこんと椅子に座った。全然声は小さくなってない。
「静かにしろや……で、用件は」
「よいしょっと……。ああごめんごめん。しれー、ラーメンに詳しいんだよね?」
「まあ、人並みにはな。それがどうかしたのか」
「うん、そうそう。雪風ってさー。親戚が台湾にいるんだってー。で、今度来るから案内したいんだってさー」
「だぁぁぁぁ!!誰でち!!休ませろでち!!」
「あ、ゴーヤさん。こんちはー!それはそうと、しれーしれー、かまえかまえー」
俺は頭に乗ろうとする時津風を、「とうっ」と軽く放り投げた。奴は器用に1回転して着地する。
「あー、しれーひどいー。大切な部下をそんな風に扱うなんて、ぎゃくたいだぎゃくたいだー」
「お前なあ、状況考えろよ……秘書艦のゴーヤが疲れて寝ようとしてるわけだぞ?空気読めや……」
「えーつまんないのー。ていうか、お願いがあってきたのにねー、雪風」
「そうです!でもお邪魔なら改めます!では、失礼します!」
ゴーヤが苦り切った顔で言う。
「あ"ー、もうどうでもいいでち。でもボリュームは下げるでち。うるさくてかなわんでち……」
「そうでしたか!!では!!」
雪風はぴょこんと椅子に座った。全然声は小さくなってない。
「静かにしろや……で、用件は」
「よいしょっと……。ああごめんごめん。しれー、ラーメンに詳しいんだよね?」
「まあ、人並みにはな。それがどうかしたのか」
「うん、そうそう。雪風ってさー。親戚が台湾にいるんだってー。で、今度来るから案内したいんだってさー」
426:◆Try7rHwMFw:2018/09/27(木)21:34:07 :P1O
雪風がなぜかピシッと敬礼した。
「はいっ!何か辛いのが食べたいらしいんで、担々麺のお店がいいかなと思ってます!しれぇ、御存知ですか!?」
「……うるせぇでち。眠れないでち……」
ゴーヤが雪風を睨み付けた。雪風は、「あっ、ごめんなさい!気をつけます!」と言うが、そもそもその声自体がうるさい。
「雪風よ、元気なのはいいが、もう少し周りを見ような?ゴーヤが時雨とバトってたのは聞いてるだろ……。
で、担々麺か。ラーメンとは別物なんだが、なぜ俺に聞くのか……」
「えっ、担々麺ってラーメンじゃないのー?」
きょとんとした顔で時津風が訊く。声はやっぱり大きい。
「ちげーよ。元は四川の汁のない辛いのが原型だ。それを日本における四川料理の産みの親、陳建民が改良し、汁のある胡麻風味の担々麺になったらしい。
まあ、最近は中国式の汁なしが急速に人気になってるがな。味は結構違う。ラーメンとはそもそもルーツが違うって訳だ」
「へぇへぇ。じゃあしれーは担々麺のお店しらないんだー」
「とは一言も言ってないが?それなりには知ってる」
「さっすがしれー!やっぱ『全国鎮守府旨辛王』だけあるねー」
ゴーヤの眉がピクリと動いた。「とっととこいつらを追い出せ」とでも言いたげだ。
店を教えて、早く済ませるとするか……。
雪風がなぜかピシッと敬礼した。
「はいっ!何か辛いのが食べたいらしいんで、担々麺のお店がいいかなと思ってます!しれぇ、御存知ですか!?」
「……うるせぇでち。眠れないでち……」
ゴーヤが雪風を睨み付けた。雪風は、「あっ、ごめんなさい!気をつけます!」と言うが、そもそもその声自体がうるさい。
「雪風よ、元気なのはいいが、もう少し周りを見ような?ゴーヤが時雨とバトってたのは聞いてるだろ……。
で、担々麺か。ラーメンとは別物なんだが、なぜ俺に聞くのか……」
「えっ、担々麺ってラーメンじゃないのー?」
きょとんとした顔で時津風が訊く。声はやっぱり大きい。
「ちげーよ。元は四川の汁のない辛いのが原型だ。それを日本における四川料理の産みの親、陳建民が改良し、汁のある胡麻風味の担々麺になったらしい。
まあ、最近は中国式の汁なしが急速に人気になってるがな。味は結構違う。ラーメンとはそもそもルーツが違うって訳だ」
「へぇへぇ。じゃあしれーは担々麺のお店しらないんだー」
「とは一言も言ってないが?それなりには知ってる」
「さっすがしれー!やっぱ『全国鎮守府旨辛王』だけあるねー」
ゴーヤの眉がピクリと動いた。「とっととこいつらを追い出せ」とでも言いたげだ。
店を教えて、早く済ませるとするか……。
427:◆Try7rHwMFw:2018/09/27(木)21:39:13 :P1O
1 東京における担々麺の名店。赤坂のあそこなら、観光にもいいだろう
2 東大生御用達。胡麻の担々麺ならここだろう
3 ラーメン屋も担々麺は作れる。六本木のこの店はどうだ
4 本格中華の奇才が作る担々麺。夜のディナーと共にどうだ
5 うるさいガキには罰ゲームを食らわせてやれ。超痺れる超本場の汁なし担々麺で泣き叫べ
※3票先取です
1 東京における担々麺の名店。赤坂のあそこなら、観光にもいいだろう
2 東大生御用達。胡麻の担々麺ならここだろう
3 ラーメン屋も担々麺は作れる。六本木のこの店はどうだ
4 本格中華の奇才が作る担々麺。夜のディナーと共にどうだ
5 うるさいガキには罰ゲームを食らわせてやれ。超痺れる超本場の汁なし担々麺で泣き叫べ
※3票先取です
428:名無しさん@おーぷん:2018/09/27(木)21:50:51 :2em
4
429:名無しさん@おーぷん:2018/09/27(木)21:54:13 :ZrZ
2
430:【36】:2018/09/27(木)21:58:34 :hAg
4
431:【72】:2018/09/27(木)21:59:42 :ZG4
2
432:【33】:2018/09/27(木)22:02:30 :vGD
4で
433:◆Try7rHwMFw:2018/09/27(木)22:07:14 :P1O
第6回 虎穴(フーシュエ)
第6回 虎穴(フーシュエ)
434:◆Try7rHwMFw:2018/09/27(木)22:12:32 :P1O
今日はここまで。ディナーは超うろ覚えなので食べログ先生をカンニングしますがご勘弁を。
なお、他の店はこんな感じです。
1 希須林
2 瀬佐味亭本店
3 成都正宗担々麺 つじ田
5 中国家庭料理 楊 2号店
なお、他の店はこんな感じです。
1 希須林
2 瀬佐味亭本店
3 成都正宗担々麺 つじ田
5 中国家庭料理 楊 2号店
436:◆Try7rHwMFw:2018/09/28(金)10:20:23 :EIr
「雪風、その親戚ってのはどんな奴だ」
「お金持ちです!『シュエフェン』っていう名前です!いつも自信満々です!」
「……ふむ?お前と同じ名前なのか。まあいいわ、せっかくだからそれなりのとこを紹介してやる」
「ありがとうございます、しれぇ!!」
目を輝かせながら、雪風が元気に叫んだ。……寝ようとしているゴーヤの眉が、ピクピクと動いている。こりゃ爆発寸前だな。
「虎穴って店だ。場所は東日本橋、詳しくはググれ。昼は担々麺、夜は創作中華の店だ。本場から来たなら、まあ満足できるだろ。……これでいいな?」
「さっすがしれー。じゃあかまえかまえー」
「それ以上やると、ゴーヤがマジでぶちきれんぞ?ほら、用件が済んだならとっとと消えた消えた」
「ぶー。つまんなーい」
「分かりました!しれぇ、お疲れさまです!!」
最後まで騒々しく時津風と雪風は去っていった。駆逐艦は往々にして個性的な奴が多いが、あの二人は特に疲れる。
「やっと帰ったでちか。……そのお店、美味しいんでち?」
ゴーヤはまだ起きていた。まあ、あれで寝られるのは加古くらいだわな。
「おう。多分奴らは昼に行くだろうが、夜も旨いぞ。むしろ夜が凄い。ミシュランでもビブグルマンとして載ってるぐらいだ。ありゃあそのうち星が付くな」
「そうなんでちか?じゃあ今度の休みに行くでち!もちろん、ディナーでち」
ゴーヤの機嫌が少し良くなったようだ。
「ぶっちゃけそこそこ値は張るが……ま、いっか。俺も何とか都合付ける。予約しとくぞ」
「雪風、その親戚ってのはどんな奴だ」
「お金持ちです!『シュエフェン』っていう名前です!いつも自信満々です!」
「……ふむ?お前と同じ名前なのか。まあいいわ、せっかくだからそれなりのとこを紹介してやる」
「ありがとうございます、しれぇ!!」
目を輝かせながら、雪風が元気に叫んだ。……寝ようとしているゴーヤの眉が、ピクピクと動いている。こりゃ爆発寸前だな。
「虎穴って店だ。場所は東日本橋、詳しくはググれ。昼は担々麺、夜は創作中華の店だ。本場から来たなら、まあ満足できるだろ。……これでいいな?」
「さっすがしれー。じゃあかまえかまえー」
「それ以上やると、ゴーヤがマジでぶちきれんぞ?ほら、用件が済んだならとっとと消えた消えた」
「ぶー。つまんなーい」
「分かりました!しれぇ、お疲れさまです!!」
最後まで騒々しく時津風と雪風は去っていった。駆逐艦は往々にして個性的な奴が多いが、あの二人は特に疲れる。
「やっと帰ったでちか。……そのお店、美味しいんでち?」
ゴーヤはまだ起きていた。まあ、あれで寝られるのは加古くらいだわな。
「おう。多分奴らは昼に行くだろうが、夜も旨いぞ。むしろ夜が凄い。ミシュランでもビブグルマンとして載ってるぐらいだ。ありゃあそのうち星が付くな」
「そうなんでちか?じゃあ今度の休みに行くでち!もちろん、ディナーでち」
ゴーヤの機嫌が少し良くなったようだ。
「ぶっちゃけそこそこ値は張るが……ま、いっか。俺も何とか都合付ける。予約しとくぞ」
437:◆Try7rHwMFw:2018/09/28(金)10:35:44 :EIr
#
「随分買い込んだな」
俺が持つ紙袋を見て、ゴーヤがにっと笑った。
「実家へのお土産でち。日本橋って、色々あるんでちね」
「昔は三越しかなかったがな。コレドができて、大分賑やかになったもんだ。俺も数年ぶりに来てビックリしたわ。
土産を買うのに使えそうな店が増えたのは、中国人観光客が増えたのもあるんだろうな。インバウンド様々ってヤツだ」
ゴーヤの顔が、少し曇った。
「数年ぶりって……」
「あー……気にすんな。お前はお前だ。それに、あいつが体験したことをお前が体験してないってのは、なんつーか不公平だろ。そういうこった」
ゴーヤが微妙な表情をした。
「……ゴーヤだけの体験も欲しいでち」
「心配すんな。これから嫌っつーほどさせてやる。……っと、すっかり忘れてたな。俺としたことが」
「何でち?」
「担々麺だよ。そういや、この近所にもあったな……」
※コンマ下!randomが70以下で昼は食べてる
#
「随分買い込んだな」
俺が持つ紙袋を見て、ゴーヤがにっと笑った。
「実家へのお土産でち。日本橋って、色々あるんでちね」
「昔は三越しかなかったがな。コレドができて、大分賑やかになったもんだ。俺も数年ぶりに来てビックリしたわ。
土産を買うのに使えそうな店が増えたのは、中国人観光客が増えたのもあるんだろうな。インバウンド様々ってヤツだ」
ゴーヤの顔が、少し曇った。
「数年ぶりって……」
「あー……気にすんな。お前はお前だ。それに、あいつが体験したことをお前が体験してないってのは、なんつーか不公平だろ。そういうこった」
ゴーヤが微妙な表情をした。
「……ゴーヤだけの体験も欲しいでち」
「心配すんな。これから嫌っつーほどさせてやる。……っと、すっかり忘れてたな。俺としたことが」
「何でち?」
「担々麺だよ。そういや、この近所にもあったな……」
※コンマ下!randomが70以下で昼は食べてる
438:【47】:2018/09/28(金)10:37:35 :g3L
ほい
439:◆Try7rHwMFw:2018/09/28(金)11:50:15 :EIr
※昼は食べてる
「そうなんでちか。でも、もうお昼食べちゃったでち」
「まーしゃあないな。担々麺、というよりは『担々麺風味噌ラーメン』という感じで旨かったんだが。ま、次の機会だな。映画でも見るか」
「でち!」
あの店には、翔香と来たことはない。ゴーヤだけの体験をさせてやろうかと思ったが、まあいくらでも機会はあるだろう。
(筆者注:「なな蓮」の担々そばのことです)
#
「いいお話だったでちね……子供向けかと思ったら、とんでもなかったでち」
「だな。まあ監督も実績がある人だし、随分贅沢なアニメだったわ」
映画を見終わり、ほっこりした気分で時計を見る。ん、ちょうどいい時間だな。
「じゃあ、東日本橋に行くか。少し歩くが大丈夫か」
「問題ないでち」
散策がてら、のんびりと街を歩く。数年前に比べれば、随分世情も安定してきたもんだ。
深海棲艦の強硬派が早く折れて、終戦になってくれればいいが……生憎、まだそれには遠そうだった。まあ、こうやって休日を楽しめるぐらいになったのには、満足すべきかもしれないが。
20分弱歩くと、目当ての店が見えてきた。
…………
※昼は食べてる
「そうなんでちか。でも、もうお昼食べちゃったでち」
「まーしゃあないな。担々麺、というよりは『担々麺風味噌ラーメン』という感じで旨かったんだが。ま、次の機会だな。映画でも見るか」
「でち!」
あの店には、翔香と来たことはない。ゴーヤだけの体験をさせてやろうかと思ったが、まあいくらでも機会はあるだろう。
(筆者注:「なな蓮」の担々そばのことです)
#
「いいお話だったでちね……子供向けかと思ったら、とんでもなかったでち」
「だな。まあ監督も実績がある人だし、随分贅沢なアニメだったわ」
映画を見終わり、ほっこりした気分で時計を見る。ん、ちょうどいい時間だな。
「じゃあ、東日本橋に行くか。少し歩くが大丈夫か」
「問題ないでち」
散策がてら、のんびりと街を歩く。数年前に比べれば、随分世情も安定してきたもんだ。
深海棲艦の強硬派が早く折れて、終戦になってくれればいいが……生憎、まだそれには遠そうだった。まあ、こうやって休日を楽しめるぐらいになったのには、満足すべきかもしれないが。
20分弱歩くと、目当ての店が見えてきた。
…………
440:◆Try7rHwMFw:2018/09/28(金)11:56:28 :EIr
※コンマ下!randomで判定
00 ?????
01〜30 時津風、雪風×2に成人済み艦娘×2
31〜80 時津風、雪風×2に成人済み艦娘
81〜97 時津風、雪風×2
98〜100 邪魔者なし
※コンマ下!randomで判定
00 ?????
01〜30 時津風、雪風×2に成人済み艦娘×2
31〜80 時津風、雪風×2に成人済み艦娘
81〜97 時津風、雪風×2
98〜100 邪魔者なし
441:【23】:2018/09/28(金)12:00:14 :3ST
あ
442:◆Try7rHwMFw:2018/09/28(金)12:22:55 :EIr
成人済み艦娘(戦艦、空母、軽空母、最上型以外の重巡、阿賀野型(除く酒匂)、大淀、水母、大半の特殊艦、一部潜水艦)から選択してください。
安価下1〜5、!randomが大きい順に2人選びます。
(選ばれた艦娘次第で追加判定)
※台湾の雪風はアズレン雪風です。
成人済み艦娘(戦艦、空母、軽空母、最上型以外の重巡、阿賀野型(除く酒匂)、大淀、水母、大半の特殊艦、一部潜水艦)から選択してください。
安価下1〜5、!randomが大きい順に2人選びます。
(選ばれた艦娘次第で追加判定)
※台湾の雪風はアズレン雪風です。
443:【48】:2018/09/28(金)12:24:08 :HGa
雲龍
444:【3】:2018/09/28(金)12:27:11 :3ST
大鳳
445:【48】:2018/09/28(金)12:27:26 :GjN
千歳
446:【26】:2018/09/28(金)12:28:20 :g3L
鳥海
447:【54】:2018/09/28(金)12:29:51 :5CJ
扶桑
448:◆Try7rHwMFw:2018/09/28(金)12:32:20 :EIr
雲龍と千歳で再判定です。
コンマ下の!randomが奇数で雲龍、偶数で千歳
雲龍と千歳で再判定です。
コンマ下の!randomが奇数で雲龍、偶数で千歳
449:【72】:2018/09/28(金)12:34:11 :3ST
あ
450:◆Try7rHwMFw:2018/09/28(金)12:45:20 :EIr
扶桑と千歳で決定します。
提督との関係は……(!randomで決定)
扶桑(コンマ下)
00〜50 提督LOVE勢
51〜80 普通の上司と部下
81〜100 既婚者
千歳(コンマ下2)
00〜60 提督LOVE勢
61〜85 普通の上司と部下
86〜95 彼氏持ち
96〜100 既婚者
扶桑と千歳で決定します。
提督との関係は……(!randomで決定)
扶桑(コンマ下)
00〜50 提督LOVE勢
51〜80 普通の上司と部下
81〜100 既婚者
千歳(コンマ下2)
00〜60 提督LOVE勢
61〜85 普通の上司と部下
86〜95 彼氏持ち
96〜100 既婚者
451:【0】:2018/09/28(金)12:51:15 :5CJ
はい
452:【97】:2018/09/28(金)12:52:54 :LbS
ろい
459:◆Try7rHwMFw:2018/09/29(土)15:29:24 :gTV
少し進めます。
その前に、千歳旦那が同行しているかを判定します。コンマ下!randomです。
※60以上でいる
少し進めます。
その前に、千歳旦那が同行しているかを判定します。コンマ下!randomです。
※60以上でいる
460:【37】:2018/09/29(土)15:29:54 :gRt
どうかな?
461:◆Try7rHwMFw:2018/09/29(土)15:31:37 :gTV
※千歳旦那(軍医)は不在
少々お待ちを。
※千歳旦那(軍医)は不在
少々お待ちを。
462:◆Try7rHwMFw:2018/09/29(土)15:54:27 :gTV
「あっ、しれー!しれーも来てたんだー」
店の前には、犬のような髪の少女がぴょんぴょんと飛び跳ねている。小動物を思わせるような小柄な少女も一緒だ。……私服のはずだが、ほぼ制服に近いな。
その後ろには見たことがないツインテールっぽい銀髪の少女がいる。……彼女が噂の親類か?
そう思った時、後ろから声をかけられた。
「あら、提督。偶然ですね……それと、ゴーヤさん」
ゴーヤの顔が険しくなった。引きつった笑顔を辛うじて作り、振り替える。
「……扶桑でちか。何でこんなところにいるでち」
「雪風さんの親類の子の歓迎会よ。せっかくこっちに来たのだから、目一杯もてなそうという話になって。
雪風は幸運艦だし、うちのエースでお世話になってるから。あなたこそなぜここに?」
「休日にどうしようと勝手でち。まさかこいつと鉢合わせるなんて……今日はやめるでち。帰るでち」
「ちょ、待てよ。予約取れたの、結構ラッキーだったんだぜ?次いつ取れるか……。てか何でそんなにギスギスしてんだ……あっ」
俺は思い出した。扶桑が俺に惚れていたらしいこと。そして、彼女の妹分である時雨がゴーヤとの決闘で敗れたこと。……そりゃ、こうなるな。
てか本来昼食べるべきところを夜に来ているってことは、あるいは狙って被せてきたかもしれない。時雨の師匠とも言える扶桑なら、やりかねない。
「てーとく。さすがに察したでちね。扶桑こそ、提督LOVE勢の中核。テーブルは違っても、こいつとは一緒の空間にいられんでちよ。
もったいないけど、帰るでち。担々麺は、別の日にするでち」
「ごめんなさーい。ちょっと遅れちゃった」
立ち去ろうとしたその時、胸の大きいポニーテールの女がこっちに駆けてきた。
「あっ、しれー!しれーも来てたんだー」
店の前には、犬のような髪の少女がぴょんぴょんと飛び跳ねている。小動物を思わせるような小柄な少女も一緒だ。……私服のはずだが、ほぼ制服に近いな。
その後ろには見たことがないツインテールっぽい銀髪の少女がいる。……彼女が噂の親類か?
そう思った時、後ろから声をかけられた。
「あら、提督。偶然ですね……それと、ゴーヤさん」
ゴーヤの顔が険しくなった。引きつった笑顔を辛うじて作り、振り替える。
「……扶桑でちか。何でこんなところにいるでち」
「雪風さんの親類の子の歓迎会よ。せっかくこっちに来たのだから、目一杯もてなそうという話になって。
雪風は幸運艦だし、うちのエースでお世話になってるから。あなたこそなぜここに?」
「休日にどうしようと勝手でち。まさかこいつと鉢合わせるなんて……今日はやめるでち。帰るでち」
「ちょ、待てよ。予約取れたの、結構ラッキーだったんだぜ?次いつ取れるか……。てか何でそんなにギスギスしてんだ……あっ」
俺は思い出した。扶桑が俺に惚れていたらしいこと。そして、彼女の妹分である時雨がゴーヤとの決闘で敗れたこと。……そりゃ、こうなるな。
てか本来昼食べるべきところを夜に来ているってことは、あるいは狙って被せてきたかもしれない。時雨の師匠とも言える扶桑なら、やりかねない。
「てーとく。さすがに察したでちね。扶桑こそ、提督LOVE勢の中核。テーブルは違っても、こいつとは一緒の空間にいられんでちよ。
もったいないけど、帰るでち。担々麺は、別の日にするでち」
「ごめんなさーい。ちょっと遅れちゃった」
立ち去ろうとしたその時、胸の大きいポニーテールの女がこっちに駆けてきた。
463:◆Try7rHwMFw:2018/09/29(土)16:20:28 :gTV
「あ、千歳さんです!お疲れさまです!」
「雪風ちゃん、ごめんね。ちょっと遅れちゃった……って提督!?それに、ゴーヤちゃんも」
千歳が驚いた表情になった。俺は溜め息混じりに言う。
「あー、なんつーか『偶然』同じ日の同じ時間に店を予約してたらしくてな。それでこうなってるってわけだ。ただ、ちょっとな……」
千歳がゴーヤと扶桑を交互に見た。「……ああ」とすぐに察したようだ。
「なるほど、そういうことですか。扶桑さん、時雨がああなって怒ってるのは分かりますけど、ここはちょっと抑えて。
ゴーヤちゃんも提督絡みで怒ってると思うけど、せっかくの歓迎会なんだから……」
「歓迎会?」
銀髪の少女がずいっと前に出る。そして思いきり胸を張り、なぜかドヤ顔で自己紹介を始めた。
「お前が雪風の指揮官か。わたしは雪風の従姉にして高貴なる幸運艦、『シュエフェン』なのだ!漢字で書くと同じ雪風なのだ!」
「まーた変なのが出たでち。しかも利根とちょっとキャラ被ってるでち」
「失敬な!雪風様は最強なのだ!日本のそんじょそこらの艦娘と一緒にしないでほしいのだ!」
「あー、こいつが噂の中華艦娘か。こっちと違った形で運用しているらしいな。しかし、日本語上手いな」
今度はこっちの雪風がえへんと胸を張った。
「シュエフェンさんは天才なんです!お母さんが日本人で、お父さんがロシアと中国のハーフなんです!飛び級で大学も出てるんです!」
「そうなのだ!これから研修でお世話になるのだ!よろしくなのだ!」
「あ、千歳さんです!お疲れさまです!」
「雪風ちゃん、ごめんね。ちょっと遅れちゃった……って提督!?それに、ゴーヤちゃんも」
千歳が驚いた表情になった。俺は溜め息混じりに言う。
「あー、なんつーか『偶然』同じ日の同じ時間に店を予約してたらしくてな。それでこうなってるってわけだ。ただ、ちょっとな……」
千歳がゴーヤと扶桑を交互に見た。「……ああ」とすぐに察したようだ。
「なるほど、そういうことですか。扶桑さん、時雨がああなって怒ってるのは分かりますけど、ここはちょっと抑えて。
ゴーヤちゃんも提督絡みで怒ってると思うけど、せっかくの歓迎会なんだから……」
「歓迎会?」
銀髪の少女がずいっと前に出る。そして思いきり胸を張り、なぜかドヤ顔で自己紹介を始めた。
「お前が雪風の指揮官か。わたしは雪風の従姉にして高貴なる幸運艦、『シュエフェン』なのだ!漢字で書くと同じ雪風なのだ!」
「まーた変なのが出たでち。しかも利根とちょっとキャラ被ってるでち」
「失敬な!雪風様は最強なのだ!日本のそんじょそこらの艦娘と一緒にしないでほしいのだ!」
「あー、こいつが噂の中華艦娘か。こっちと違った形で運用しているらしいな。しかし、日本語上手いな」
今度はこっちの雪風がえへんと胸を張った。
「シュエフェンさんは天才なんです!お母さんが日本人で、お父さんがロシアと中国のハーフなんです!飛び級で大学も出てるんです!」
「そうなのだ!これから研修でお世話になるのだ!よろしくなのだ!」
467:◆Try7rHwMFw:2018/09/29(土)21:23:18 :d5L
「研修って……あの噂のか。中国との交換の。
しかし俺の所に誰が来るかという話はまだ聞いてないぞ」
「それはそうなのだ。明日正式に発表なのだ。でも雪風には最初に知らせたかったのだ」
妙に得意げに白い雪風が言う。
「……ってことは、ここで帰るわけにもいかなくなったな……どうよ、ゴーヤ」
「でち……。あの女さえいなければ話は早かったんでちけど」
扶桑も額に皴を寄せている。
「全くね。忌々しいったらありゃしない」
二人の間に千歳が割って入る。
「もう!二人ともいい加減にする!シュエフェンちゃんが怖がるじゃない!
特に扶桑さん。主人から聞いてるでしょ?あまり過激にやるようだと、『ドクターストップ』かかるわよ」
扶桑が大きく息をついた。
「……分かってるわよ。情緒不安定な艦娘に対しては、軍医の判断で『特殊更正プログラム』が課される。
時雨はその前段階で留め置かれたけど、本格治療が必要と判断されたら転属は確実。
……雪風は意識しなかったんでしょうけど、実に嫌な同行者の選択をしてくれたものね」
「お褒めの言葉どうも。今日は喧嘩はなし。いいわね、二人とも」
「しょうがないでち。千歳が正しいでち」
ゴーヤが苦笑する。鎮守府で最初に結婚した千歳は、その経緯も含めて皆から一目置かれている。
彼女がここにいてくれて本当に助かった。
「じゃあ、店に入るか。テーブルは一つにまとめてもらおう」
「研修って……あの噂のか。中国との交換の。
しかし俺の所に誰が来るかという話はまだ聞いてないぞ」
「それはそうなのだ。明日正式に発表なのだ。でも雪風には最初に知らせたかったのだ」
妙に得意げに白い雪風が言う。
「……ってことは、ここで帰るわけにもいかなくなったな……どうよ、ゴーヤ」
「でち……。あの女さえいなければ話は早かったんでちけど」
扶桑も額に皴を寄せている。
「全くね。忌々しいったらありゃしない」
二人の間に千歳が割って入る。
「もう!二人ともいい加減にする!シュエフェンちゃんが怖がるじゃない!
特に扶桑さん。主人から聞いてるでしょ?あまり過激にやるようだと、『ドクターストップ』かかるわよ」
扶桑が大きく息をついた。
「……分かってるわよ。情緒不安定な艦娘に対しては、軍医の判断で『特殊更正プログラム』が課される。
時雨はその前段階で留め置かれたけど、本格治療が必要と判断されたら転属は確実。
……雪風は意識しなかったんでしょうけど、実に嫌な同行者の選択をしてくれたものね」
「お褒めの言葉どうも。今日は喧嘩はなし。いいわね、二人とも」
「しょうがないでち。千歳が正しいでち」
ゴーヤが苦笑する。鎮守府で最初に結婚した千歳は、その経緯も含めて皆から一目置かれている。
彼女がここにいてくれて本当に助かった。
「じゃあ、店に入るか。テーブルは一つにまとめてもらおう」
468:◆Try7rHwMFw:2018/09/29(土)21:41:01 :d5L
#
店は薄暗く、ジャズが静かに流れている。厨房の奥からシェフと思われる男が「予約のお客様ですか」と呼び掛けてきた。
「ああ。予約していた小泉だ。こっちの予約客とは偶然知り合いでな。
テーブルと料理も一緒にしてくれると助かる。会計もな」
「かしこまりました。こちらが本日のコースメニューになります。お飲み物はアラカルトで」
軽く目を通す。……まるでフレンチだな。
「しれー、何かよく分からないよー。レバニラとかスープは分かるけどさー」
「だから言っただろ、夜は子供が来る店じゃないって。
飲み物は大人組はビールでいいな。後で紹興酒頼むが。時津風と雪風は適当にジュースでいいとして……君はどうするんだ?」
「ビールは苦いからサワーがいいのだ。雪風様は大人だけど、甘いのがいいのだ」
「……本当に成人なのか?」
訝し気に白い雪風を見ると、「何を失礼な」というように睨み返される。
「雪風様を舐めるななのだ。さっき雪風も言ったけど、大学も出てるのだ」
「とはいってもどう見ても、なあ。うちの雪風より年上っぽいが、どこからどう見ても」
※コンマ下!randomで80以上なら本当に成人
#
店は薄暗く、ジャズが静かに流れている。厨房の奥からシェフと思われる男が「予約のお客様ですか」と呼び掛けてきた。
「ああ。予約していた小泉だ。こっちの予約客とは偶然知り合いでな。
テーブルと料理も一緒にしてくれると助かる。会計もな」
「かしこまりました。こちらが本日のコースメニューになります。お飲み物はアラカルトで」
軽く目を通す。……まるでフレンチだな。
「しれー、何かよく分からないよー。レバニラとかスープは分かるけどさー」
「だから言っただろ、夜は子供が来る店じゃないって。
飲み物は大人組はビールでいいな。後で紹興酒頼むが。時津風と雪風は適当にジュースでいいとして……君はどうするんだ?」
「ビールは苦いからサワーがいいのだ。雪風様は大人だけど、甘いのがいいのだ」
「……本当に成人なのか?」
訝し気に白い雪風を見ると、「何を失礼な」というように睨み返される。
「雪風様を舐めるななのだ。さっき雪風も言ったけど、大学も出てるのだ」
「とはいってもどう見ても、なあ。うちの雪風より年上っぽいが、どこからどう見ても」
※コンマ下!randomで80以上なら本当に成人
469:【58】:2018/09/29(土)21:41:22 :W1s
そい
470:◆Try7rHwMFw:2018/09/29(土)22:45:22 :d5L
「せ、成人なのだ!向こうでは、大学出てるって言えばお酒飲ませてく……」
「シュエフェンちゃんは雪風より2つ上なのです!とってもいいお姉さんなのです!!」
天真爛漫な笑顔で雪風が言う。2つ上?
「……って15歳でちか!?アウトでち。完全にアウトでち」
「だよなあ。お前もジュースな」
「ケチなこと言わないのだ!日本の海軍は厳しいのだぁ!!」
こほんと咳ばらいをして店主がやってきた。
「お飲み物は」
「ビール4、マンゴージュース3で。騒々しくて済まない」
「いえ、今日はお客様だけですので。あまり大声でなければ構いません」
そう言うとまた厨房に去っていく。ホールには誰もいない。扶桑が不思議そうに訊く。
「まさか、夜は全部一人でやってるのですか?」
「らしいな。だから夜は完全予約制、時間帯で区切られてて、そこで2組のみだったはずだ」
ビールとジュースのグラスがやって来る。
「じゃあ、シュエフェンの来日を祝って。……変な奴ばかりの鎮守府だが、まあ仲良くやってくれ」
「大丈夫なのだ。向こうも結構にぎやかだったのだ」
「そうなのか……。まあいいわ。んじゃ、しばしよろしくってやつだ。乾杯」
「「「かんぱーい」」」
ビールを口にすると、白い方の雪風が俺とゴーヤを見た。
「さっきそこの扶桑って人と何かあったみたいなのだが、指揮官とそこのちっちゃいのは恋人か何かなのか?三角関係なのか?」
俺とゴーヤは顔を見合わせた。扶桑が心底嫌そうな顔をしている。
「せ、成人なのだ!向こうでは、大学出てるって言えばお酒飲ませてく……」
「シュエフェンちゃんは雪風より2つ上なのです!とってもいいお姉さんなのです!!」
天真爛漫な笑顔で雪風が言う。2つ上?
「……って15歳でちか!?アウトでち。完全にアウトでち」
「だよなあ。お前もジュースな」
「ケチなこと言わないのだ!日本の海軍は厳しいのだぁ!!」
こほんと咳ばらいをして店主がやってきた。
「お飲み物は」
「ビール4、マンゴージュース3で。騒々しくて済まない」
「いえ、今日はお客様だけですので。あまり大声でなければ構いません」
そう言うとまた厨房に去っていく。ホールには誰もいない。扶桑が不思議そうに訊く。
「まさか、夜は全部一人でやってるのですか?」
「らしいな。だから夜は完全予約制、時間帯で区切られてて、そこで2組のみだったはずだ」
ビールとジュースのグラスがやって来る。
「じゃあ、シュエフェンの来日を祝って。……変な奴ばかりの鎮守府だが、まあ仲良くやってくれ」
「大丈夫なのだ。向こうも結構にぎやかだったのだ」
「そうなのか……。まあいいわ。んじゃ、しばしよろしくってやつだ。乾杯」
「「「かんぱーい」」」
ビールを口にすると、白い方の雪風が俺とゴーヤを見た。
「さっきそこの扶桑って人と何かあったみたいなのだが、指揮官とそこのちっちゃいのは恋人か何かなのか?三角関係なのか?」
俺とゴーヤは顔を見合わせた。扶桑が心底嫌そうな顔をしている。
471:◆Try7rHwMFw:2018/09/29(土)22:47:49 :d5L
「半分正しいな。俺とゴーヤは付き合ってる。ただ、三角関係かというとノーだな。
そもそも、何でそんなにゴーヤに突っかかって来るのか、未だに分からんな。
俺に惚れていたというのはまだ分かるが、何でお前といい時雨といいそこまでやる?」
扶桑が軽く溜め息をついた。
「提督、あなたに振り向いてもらえるとは思ってません。あなたの心は、あなただけのものですから。
ただ、これは一種のけじめなんです。ゴーヤさんは知らなかったことですけど、私たちは一種の相互不可侵条約のようなものを結んでいたんです。
提督は、私たちに一種の線を引いていました。それが戦争によるものとも知っていました。
だから、戦争が終わるまで、提督のことを好きな子たちは敢えて動かない。そう決めてたんです」
ゴーヤが「理解できない」とでも言いたげに首を振った。
「ゴーヤはそういうグループに入ってなかったでちからね。知る由もなかったでち。
まあ、知ってても同意はしなかったと思うけど。感情を無理して抑えるのは、不自然でち」
扶桑がキッとゴーヤを睨みつけた。千歳が「こらこら、喧嘩しない!」と割って入る。
「私は確かにあなたの言う通りだと思うし、ゴーヤちゃんは悪くないと思うの。
でも、『公私混同を禁ず』は提督については固く守られてた。
ゴーヤちゃんがそれを破ったのも、また事実。だから、落とし前を付けろってことよね」
「そういうこと。だから、勝負に負けたら、ゴーヤは鎮守府を出ていく」
扶桑の言葉に、ゴーヤが苦り切った顔になった。
「てーとく、別に負けたからといって別れるとかそういうんじゃないんでち。
ただ、『一緒に戦う権利はない』というのが、こいつらの言い分でち。
むかつくけど、乗らざるを得ない事情があるでち」
「半分正しいな。俺とゴーヤは付き合ってる。ただ、三角関係かというとノーだな。
そもそも、何でそんなにゴーヤに突っかかって来るのか、未だに分からんな。
俺に惚れていたというのはまだ分かるが、何でお前といい時雨といいそこまでやる?」
扶桑が軽く溜め息をついた。
「提督、あなたに振り向いてもらえるとは思ってません。あなたの心は、あなただけのものですから。
ただ、これは一種のけじめなんです。ゴーヤさんは知らなかったことですけど、私たちは一種の相互不可侵条約のようなものを結んでいたんです。
提督は、私たちに一種の線を引いていました。それが戦争によるものとも知っていました。
だから、戦争が終わるまで、提督のことを好きな子たちは敢えて動かない。そう決めてたんです」
ゴーヤが「理解できない」とでも言いたげに首を振った。
「ゴーヤはそういうグループに入ってなかったでちからね。知る由もなかったでち。
まあ、知ってても同意はしなかったと思うけど。感情を無理して抑えるのは、不自然でち」
扶桑がキッとゴーヤを睨みつけた。千歳が「こらこら、喧嘩しない!」と割って入る。
「私は確かにあなたの言う通りだと思うし、ゴーヤちゃんは悪くないと思うの。
でも、『公私混同を禁ず』は提督については固く守られてた。
ゴーヤちゃんがそれを破ったのも、また事実。だから、落とし前を付けろってことよね」
「そういうこと。だから、勝負に負けたら、ゴーヤは鎮守府を出ていく」
扶桑の言葉に、ゴーヤが苦り切った顔になった。
「てーとく、別に負けたからといって別れるとかそういうんじゃないんでち。
ただ、『一緒に戦う権利はない』というのが、こいつらの言い分でち。
むかつくけど、乗らざるを得ない事情があるでち」
472:◆Try7rHwMFw:2018/09/29(土)22:57:36 :d5L
「事情?」
扶桑が頷く。
「ええ。提督、私の父が誰かは、よくご存じですよね」
「……お前なぁ……」
扶桑の父は、海自の幕僚長だ。彼にこのことを言えば、俺とゴーヤは左遷確実。しかも引き離されるだろう。
元々、彼女は父が海自の大物という経緯で艦娘になっていた。
艦娘としての適性のなさを涙ぐましい努力でカバーし、山城ともども主力の一角を担うまでになった扶桑への人望はそれなりに厚い。
これまでは血縁のコネを見せびらかすことは一切してこなかったが……こういう使い方をするとは。
「扶桑、ちょっとおかしいでち。そこまでするでちか」
「狂ってるのは自覚してるわ。ただ、納得したいのよ。みんな。
だから、勝負に負けたら潔くあなたを認め、身を引く。そういうルールでしょ?」
「だからこそ、ゴーヤは負けられんでち。……扶桑、今勝負の内容決めるでちか。
扶桑が負ければ、多分これで終わるはずでち」
「……いいわ。受けましょう。でも、武力系はダメ。小池軍医に目を付けられてるし」
その時手を挙げたのは……時津風だった。
「事情?」
扶桑が頷く。
「ええ。提督、私の父が誰かは、よくご存じですよね」
「……お前なぁ……」
扶桑の父は、海自の幕僚長だ。彼にこのことを言えば、俺とゴーヤは左遷確実。しかも引き離されるだろう。
元々、彼女は父が海自の大物という経緯で艦娘になっていた。
艦娘としての適性のなさを涙ぐましい努力でカバーし、山城ともども主力の一角を担うまでになった扶桑への人望はそれなりに厚い。
これまでは血縁のコネを見せびらかすことは一切してこなかったが……こういう使い方をするとは。
「扶桑、ちょっとおかしいでち。そこまでするでちか」
「狂ってるのは自覚してるわ。ただ、納得したいのよ。みんな。
だから、勝負に負けたら潔くあなたを認め、身を引く。そういうルールでしょ?」
「だからこそ、ゴーヤは負けられんでち。……扶桑、今勝負の内容決めるでちか。
扶桑が負ければ、多分これで終わるはずでち」
「……いいわ。受けましょう。でも、武力系はダメ。小池軍医に目を付けられてるし」
その時手を挙げたのは……時津風だった。
473:◆Try7rHwMFw:2018/09/29(土)23:13:08 :d5L
「わたし恋愛とか難しいことよく分かんないんだけどさー。
しれーが好きなもので勝負すればいいんじゃない?例えば、ラーメンとかさー」
「ラーメン?作れってか」
「そうそう。でも、ラーメン作るのって大変らしいから、誰かヘルプ使っていいみたいな感じでー。
あるいは、有名なお店のラーメンの再現とかでもいいかもねー」
千歳がぽんと手を叩いた。
「それいいわね!2人とも、異論は?」
「……ないでち」
「ないわ」
何か話が妙な方向に転がっていってる。ゴーヤの料理の腕は並みだ。これから上達するでちとこの前息まいてたが。
半面、扶桑は大和程ではないが相当上手いらしいとの評判だ。
ゴーヤが俺の好みを知っている分、扶桑は腕で優位ということか。
……俺が絡んでなければ、いい勝負だと乗り気になっただろうな。
「一応言うが、ゴーヤが負けても別れる気は微塵もないぞ」
「それで構いません。鎮守府内の秩序のためです。
それに、一緒に戦えないのが何よりの苦痛というのは、提督が一番よくご存知でしょう?」
ゴーヤの苦渋に満ちた表情を見ると、心が痛んだ。……だが、どうもこれしかないらしい。
「ゴーヤは、負けないでち。だから心配しなくていいでち。……扶桑、いつやるでち」
「3週後。……覚悟しておきなさい」
「わたし恋愛とか難しいことよく分かんないんだけどさー。
しれーが好きなもので勝負すればいいんじゃない?例えば、ラーメンとかさー」
「ラーメン?作れってか」
「そうそう。でも、ラーメン作るのって大変らしいから、誰かヘルプ使っていいみたいな感じでー。
あるいは、有名なお店のラーメンの再現とかでもいいかもねー」
千歳がぽんと手を叩いた。
「それいいわね!2人とも、異論は?」
「……ないでち」
「ないわ」
何か話が妙な方向に転がっていってる。ゴーヤの料理の腕は並みだ。これから上達するでちとこの前息まいてたが。
半面、扶桑は大和程ではないが相当上手いらしいとの評判だ。
ゴーヤが俺の好みを知っている分、扶桑は腕で優位ということか。
……俺が絡んでなければ、いい勝負だと乗り気になっただろうな。
「一応言うが、ゴーヤが負けても別れる気は微塵もないぞ」
「それで構いません。鎮守府内の秩序のためです。
それに、一緒に戦えないのが何よりの苦痛というのは、提督が一番よくご存知でしょう?」
ゴーヤの苦渋に満ちた表情を見ると、心が痛んだ。……だが、どうもこれしかないらしい。
「ゴーヤは、負けないでち。だから心配しなくていいでち。……扶桑、いつやるでち」
「3週後。……覚悟しておきなさい」
476:◆Try7rHwMFw:2018/09/30(日)22:51:10 :ZOc
「はいはい、女の喧嘩はそこまで。さっきも言ったけど、今日はシュエフェンちゃんの歓迎会よ。
次やったら、2人そろって主人に言いつけますから、そのつもりで」
「分かったでち」
「了解よ」
千歳の仲裁で、一応その場は収まった。……しかし困ったことになった。ゴーヤは絶対勝つと言ったが……。
白い方の雪風を見ると、妙に感心した様子でこちらを見ている。
「ん、どうした?」
「いや、どこも似たようなもんだと思ったのだ。指揮官というものは、大変なのだ。
むしろこうやって平和的解決が図られる辺りは、こっちの方が随分いい感じなのだ。
うちの赤城に詰めの赤を煎じて飲ませてやりたいのだ」
「赤城が?あの?」
うちの赤城と言えば、とりあえず食い物さえあれば幸せという暢気な奴だ。
一応職務には真摯だが、それ以上のことはない。人畜無害、ある意味うちの(というか間宮の)マスコットのようなものだ。
「……噂には聞いたことがあるわね。色々な意味で危ないんですって?」
「指揮官や指揮官のことを好きな奴には容赦しないのだ。殺人未遂は日常茶飯事なのだ。
本気で何とかしてもらいたいものなのだ……」
扶桑の問いに、がっくりと白雪風が肩を落とす。
「あー、そういや同じ艦娘でも大分違うらしいでちね。性格も外見も。
大鳳なんてうちのが愕然とするぐらいおっきいらしいでち」
「おっきい大鳳って想像も付かんな……っと、最初のが来たぞ」
「はいはい、女の喧嘩はそこまで。さっきも言ったけど、今日はシュエフェンちゃんの歓迎会よ。
次やったら、2人そろって主人に言いつけますから、そのつもりで」
「分かったでち」
「了解よ」
千歳の仲裁で、一応その場は収まった。……しかし困ったことになった。ゴーヤは絶対勝つと言ったが……。
白い方の雪風を見ると、妙に感心した様子でこちらを見ている。
「ん、どうした?」
「いや、どこも似たようなもんだと思ったのだ。指揮官というものは、大変なのだ。
むしろこうやって平和的解決が図られる辺りは、こっちの方が随分いい感じなのだ。
うちの赤城に詰めの赤を煎じて飲ませてやりたいのだ」
「赤城が?あの?」
うちの赤城と言えば、とりあえず食い物さえあれば幸せという暢気な奴だ。
一応職務には真摯だが、それ以上のことはない。人畜無害、ある意味うちの(というか間宮の)マスコットのようなものだ。
「……噂には聞いたことがあるわね。色々な意味で危ないんですって?」
「指揮官や指揮官のことを好きな奴には容赦しないのだ。殺人未遂は日常茶飯事なのだ。
本気で何とかしてもらいたいものなのだ……」
扶桑の問いに、がっくりと白雪風が肩を落とす。
「あー、そういや同じ艦娘でも大分違うらしいでちね。性格も外見も。
大鳳なんてうちのが愕然とするぐらいおっきいらしいでち」
「おっきい大鳳って想像も付かんな……っと、最初のが来たぞ」
477:◆Try7rHwMFw:2018/09/30(日)23:10:52 :ZOc
シェフが持ってきたのは、何かを揚げたものだ。衣は緑色だが……。
「空豆の揚げ雲?です」
雲?、ねえ。これが……。2つしかないが、前菜的な何かということか。
「ほうっ?」
……噛むとサクッとした歯ごたえと共に、空豆の風味が一気に広がる。皆も一様に驚いている。
「これは美味しいですね!ビールととってもよく合います。
私、紹興酒頼んじゃっていいですか?もっと食べたいけど、量がないのは残念ね」
千歳はえらく気に入ったようだ。確かに、酒のつまみと言えば空豆は定番の一つだが、
その旨味を凝縮したような味だ。あまり中華っぽくはないが。
「いけるのだ!でもサワーが……」
「だから酒は禁止。日本、というよりうちの鎮守府は全体的に厳しいんだよ。
話を元に戻すと、ケッコンカッコカリみたいな制度もあるわけか」
「うむ!ただ、こっちの方は本当の結婚みたいになってることも多いのだ。
だから血で血を洗うことになってる指揮官もいるらしいのだ」
ふむ、そこは日中の文化の違いなのだろうか。ゴーヤが手を挙げる。
「ということは、向こうにもゴーヤがいるでち?」
「??ゴーヤはいないけど、伊58さんならいるのだ。
見た目は大分違うけど、ちっさいのだ。あと静かでお姉さんっぽいのだ」
「ちっさいんでちか……」
ゴーヤが微妙な表情を浮かべた所に、2皿目が来た。
シェフが持ってきたのは、何かを揚げたものだ。衣は緑色だが……。
「空豆の揚げ雲?です」
雲?、ねえ。これが……。2つしかないが、前菜的な何かということか。
「ほうっ?」
……噛むとサクッとした歯ごたえと共に、空豆の風味が一気に広がる。皆も一様に驚いている。
「これは美味しいですね!ビールととってもよく合います。
私、紹興酒頼んじゃっていいですか?もっと食べたいけど、量がないのは残念ね」
千歳はえらく気に入ったようだ。確かに、酒のつまみと言えば空豆は定番の一つだが、
その旨味を凝縮したような味だ。あまり中華っぽくはないが。
「いけるのだ!でもサワーが……」
「だから酒は禁止。日本、というよりうちの鎮守府は全体的に厳しいんだよ。
話を元に戻すと、ケッコンカッコカリみたいな制度もあるわけか」
「うむ!ただ、こっちの方は本当の結婚みたいになってることも多いのだ。
だから血で血を洗うことになってる指揮官もいるらしいのだ」
ふむ、そこは日中の文化の違いなのだろうか。ゴーヤが手を挙げる。
「ということは、向こうにもゴーヤがいるでち?」
「??ゴーヤはいないけど、伊58さんならいるのだ。
見た目は大分違うけど、ちっさいのだ。あと静かでお姉さんっぽいのだ」
「ちっさいんでちか……」
ゴーヤが微妙な表情を浮かべた所に、2皿目が来た。
478:◆Try7rHwMFw:2018/09/30(日)23:25:34 :ZOc
「白レバーペーストと黄ニラのレバニラです」
皿にはパテ・ド・カンパーニュと見間違えるほどのレバーのブロックが3切れほど。
その上にニラが乗っているわけだが……ただのニラじゃない。
「しれー、レバニラってあるけどこれ本当にレバニラなのー?
時津風の知ってるレバニラと全然違うんだけど」
「……レバーとニラの料理だから、レバニラなのは確かなんだが……とにかく食おう」
口にして最初に感じた一語は、濃厚。そして蕩ける。
上等なフレンチが出すパテ・ド・カンパーニュをさらに濃くし、しかも一切の臭みを取り除いた感じだ。
黄ニラの風味もそれに絡み合い、ただの臭み消し以上の物になっている。絶品だな。
「しれぇ!!美味しいです!!」
「なのだ!!台北にもこんな料理はないのだ!!
昔父様に連れて行ってもらった、フランス料理みたいなのだ!!」
俺と同じ感想を持った奴がいた。千歳はというと、紹興酒を飲んでご機嫌だ。
「これもお酒にとっても合いますね、提督。あの人も来ればよかったのに」
「確かに。軍医は出張だったな」
「はい。舞鶴に。全国鎮守府の軍医による勉強会だそうで。
戻ってきたら、今度は二人で来たいですね♪」
「あー、あいつも飲むからな……。しかも健啖家だから、さぞかし喜ぶだろうな」
「そういえば、小池先生とは付き合い長いんだったけ?
高校の時からの友達だって、前言ってたでち」
俺はレバーを一切れ口にして頷いた。
「まあな。ある種の腐れ縁だ。もうお前らが結婚して2年か」
千歳が小さく頷く。
「そうですね。その節はお世話に。子供は戦争が終わってからと決めてますけどね」
「白レバーペーストと黄ニラのレバニラです」
皿にはパテ・ド・カンパーニュと見間違えるほどのレバーのブロックが3切れほど。
その上にニラが乗っているわけだが……ただのニラじゃない。
「しれー、レバニラってあるけどこれ本当にレバニラなのー?
時津風の知ってるレバニラと全然違うんだけど」
「……レバーとニラの料理だから、レバニラなのは確かなんだが……とにかく食おう」
口にして最初に感じた一語は、濃厚。そして蕩ける。
上等なフレンチが出すパテ・ド・カンパーニュをさらに濃くし、しかも一切の臭みを取り除いた感じだ。
黄ニラの風味もそれに絡み合い、ただの臭み消し以上の物になっている。絶品だな。
「しれぇ!!美味しいです!!」
「なのだ!!台北にもこんな料理はないのだ!!
昔父様に連れて行ってもらった、フランス料理みたいなのだ!!」
俺と同じ感想を持った奴がいた。千歳はというと、紹興酒を飲んでご機嫌だ。
「これもお酒にとっても合いますね、提督。あの人も来ればよかったのに」
「確かに。軍医は出張だったな」
「はい。舞鶴に。全国鎮守府の軍医による勉強会だそうで。
戻ってきたら、今度は二人で来たいですね♪」
「あー、あいつも飲むからな……。しかも健啖家だから、さぞかし喜ぶだろうな」
「そういえば、小池先生とは付き合い長いんだったけ?
高校の時からの友達だって、前言ってたでち」
俺はレバーを一切れ口にして頷いた。
「まあな。ある種の腐れ縁だ。もうお前らが結婚して2年か」
千歳が小さく頷く。
「そうですね。その節はお世話に。子供は戦争が終わってからと決めてますけどね」
479:◆Try7rHwMFw:2018/09/30(日)23:36:50 :ZOc
鎮守府関係者と艦娘との正式な結婚は、海自内規で禁じられていた。
それを押し通した全国初の事例が、小池軍医と千歳だったわけだ。あの時は俺も随分苦労したものだ。
「子供か……」
何か言おうと思ったが、扶桑からの視線が鋭くやめておいた。また火に油を注ぐことになりかねない。
「……しかし、羨ましいのだ。雪風も、そういう人が欲しいのだ」
白雪風が凹み気味に言う。うちの雪風が、ピンと手を挙げた。
「そうなんです!!シュエフェンちゃんは、向こうのしれぇのことが好きなんです!!
でも好きと伝えられなくて苦労しているのです!!」
「あー!お前、それだけは言うなと……!」
「ごめんなさい!雪風、言っちゃいました!!」
なるほどなあ。そっちもそっちで苦労しているというわけか。
#
コースはその後生春巻き、シイタケのスープ、甘鯛のあんかけ、子豚のグリルと続いた。
中華というよりはヌーベルシノワ、あるいはフレンチに和食を足して割ったような感じだ。
どれも食材の旨味が引き出されていて、とても旨い。
ゴーヤと扶桑のいさかいが心配だったが、食事のおかげもあって話の話題の中心は白雪風になっていた。
そして、今日の目当ての一品がやっと登場した。
鎮守府関係者と艦娘との正式な結婚は、海自内規で禁じられていた。
それを押し通した全国初の事例が、小池軍医と千歳だったわけだ。あの時は俺も随分苦労したものだ。
「子供か……」
何か言おうと思ったが、扶桑からの視線が鋭くやめておいた。また火に油を注ぐことになりかねない。
「……しかし、羨ましいのだ。雪風も、そういう人が欲しいのだ」
白雪風が凹み気味に言う。うちの雪風が、ピンと手を挙げた。
「そうなんです!!シュエフェンちゃんは、向こうのしれぇのことが好きなんです!!
でも好きと伝えられなくて苦労しているのです!!」
「あー!お前、それだけは言うなと……!」
「ごめんなさい!雪風、言っちゃいました!!」
なるほどなあ。そっちもそっちで苦労しているというわけか。
#
コースはその後生春巻き、シイタケのスープ、甘鯛のあんかけ、子豚のグリルと続いた。
中華というよりはヌーベルシノワ、あるいはフレンチに和食を足して割ったような感じだ。
どれも食材の旨味が引き出されていて、とても旨い。
ゴーヤと扶桑のいさかいが心配だったが、食事のおかげもあって話の話題の中心は白雪風になっていた。
そして、今日の目当ての一品がやっと登場した。
483:◆Try7rHwMFw:2018/10/01(月)09:31:33 :Mwl
「和えそばです。よく混ぜてどうぞ」
皿の中央には、小さく盛られた麺。辛味オイルがかかり、上には肉味噌が乗せられている。皿の底には胡麻ソースと、カシューナッツだ。そして、鮮烈な香りが皿の周りに拡がる。
「凄い香りでち。これがてーとくが言ってた担々麺でちか?」
「そそ。昼はこれが主力で、絞めにジャスミンライスをかけて食うらしい。少なく見えるが、見た目よりもボリュームあるぞ」
よく混ぜて持ち上げると、太めの麺に胡麻と肉味噌がしっかり絡んでいる。
そして口にすると、最初に感じるのは肉味噌と胡麻の甘さ。そこからじっくりと辛味が拡がり……花椒の香りと鋭い痺れが舌を襲う。
「旨いのだ!この辛さと痺れ、成都のよりはマイルドだが濃厚でいけるのだ!もっとないのか?」
白い方の雪風は上機嫌だ。一方、うちのお子様二人は辛さと痺れからフリーズしている。
「し、しれー……美味しいんだけど、辛いよー」
「お子様舌には分からんだろうな。そこにある黒酢を入れれば多少はマシになるぞ」
俺はもう一度担々麺を噛み締める。太麺そのものの旨さを、複雑な構成のタレがしっかり引き立てている。
汁無し担々麺というと花椒の痺れで殴り付けてくるタイプの店が少なくないが、ここのはマイルドでありながら花椒も生かしている。まさに職人の技だ。
「うん、美味しい♪お酒で酔った頭をピシッと引き締めてくれる感じでいいですね」
「でち。さっすが提督でち。……奥さんも、美味しいの好きだったんでちね」
「まあな。……ってそれは」
皆の顔が俺に向く。特に扶桑は驚愕のあまり固まっている感じだ。
「て、提督……?それって」
「あー、しゃあねえなあ。まあ、もう隠す意味もねえだろ。俺は昔、結婚してたんだよ。嫁も艦娘でな……殉死だ」
「和えそばです。よく混ぜてどうぞ」
皿の中央には、小さく盛られた麺。辛味オイルがかかり、上には肉味噌が乗せられている。皿の底には胡麻ソースと、カシューナッツだ。そして、鮮烈な香りが皿の周りに拡がる。
「凄い香りでち。これがてーとくが言ってた担々麺でちか?」
「そそ。昼はこれが主力で、絞めにジャスミンライスをかけて食うらしい。少なく見えるが、見た目よりもボリュームあるぞ」
よく混ぜて持ち上げると、太めの麺に胡麻と肉味噌がしっかり絡んでいる。
そして口にすると、最初に感じるのは肉味噌と胡麻の甘さ。そこからじっくりと辛味が拡がり……花椒の香りと鋭い痺れが舌を襲う。
「旨いのだ!この辛さと痺れ、成都のよりはマイルドだが濃厚でいけるのだ!もっとないのか?」
白い方の雪風は上機嫌だ。一方、うちのお子様二人は辛さと痺れからフリーズしている。
「し、しれー……美味しいんだけど、辛いよー」
「お子様舌には分からんだろうな。そこにある黒酢を入れれば多少はマシになるぞ」
俺はもう一度担々麺を噛み締める。太麺そのものの旨さを、複雑な構成のタレがしっかり引き立てている。
汁無し担々麺というと花椒の痺れで殴り付けてくるタイプの店が少なくないが、ここのはマイルドでありながら花椒も生かしている。まさに職人の技だ。
「うん、美味しい♪お酒で酔った頭をピシッと引き締めてくれる感じでいいですね」
「でち。さっすが提督でち。……奥さんも、美味しいの好きだったんでちね」
「まあな。……ってそれは」
皆の顔が俺に向く。特に扶桑は驚愕のあまり固まっている感じだ。
「て、提督……?それって」
「あー、しゃあねえなあ。まあ、もう隠す意味もねえだろ。俺は昔、結婚してたんだよ。嫁も艦娘でな……殉死だ」
484:◆Try7rHwMFw:2018/10/01(月)09:47:01 :Mwl
#
「しれぇにそんな過去があったなんて……知りませんでした」
締めのプーアル茶を使ったデザートを口に、雪風がしょぼんと下を向く。
「公私混同の禁を自らに課してたのは、もう二度と愛する女を失いたくなかったからだ。結局、自分で反故にしちまったが。
実は、ゴーヤも似たような経験をしてる。だから、そこの想いは良く似てたってのはある」
扶桑が俺を見た。
「……提督のお考え、良く分かりました。少しだけ、腑に落ちた気がします。……ただそれでも理解できない子はいるでしょう。時雨みたいに」
「……けじめは必要、ってことか」
「ええ。私の気持ちに決着を付ける、という身勝手な理由ももちろんありますけど」
「お前も難儀な奴だな」
溜め息を俺は一つついた。ゴーヤは真剣な表情で扶桑を見据える。
「だからこそ、負けないでち。ゴーヤだって、それなりの覚悟を背負ってるでち。それを扶桑に見せてやるでち」
「……そう」
千歳がやれやれと首を振った。
「はいはい、そこまでそこまで。じゃあ提督、そろそろ終わりにします?」
「ん、了解だ。飲み代はまさか……」
00〜50 もちろん、提督持ちですよ♪
51〜80 さすがに悪いですし、割り勘で
81〜100 ここはくじ引きで♪
※コンマ下、!random
#
「しれぇにそんな過去があったなんて……知りませんでした」
締めのプーアル茶を使ったデザートを口に、雪風がしょぼんと下を向く。
「公私混同の禁を自らに課してたのは、もう二度と愛する女を失いたくなかったからだ。結局、自分で反故にしちまったが。
実は、ゴーヤも似たような経験をしてる。だから、そこの想いは良く似てたってのはある」
扶桑が俺を見た。
「……提督のお考え、良く分かりました。少しだけ、腑に落ちた気がします。……ただそれでも理解できない子はいるでしょう。時雨みたいに」
「……けじめは必要、ってことか」
「ええ。私の気持ちに決着を付ける、という身勝手な理由ももちろんありますけど」
「お前も難儀な奴だな」
溜め息を俺は一つついた。ゴーヤは真剣な表情で扶桑を見据える。
「だからこそ、負けないでち。ゴーヤだって、それなりの覚悟を背負ってるでち。それを扶桑に見せてやるでち」
「……そう」
千歳がやれやれと首を振った。
「はいはい、そこまでそこまで。じゃあ提督、そろそろ終わりにします?」
「ん、了解だ。飲み代はまさか……」
00〜50 もちろん、提督持ちですよ♪
51〜80 さすがに悪いですし、割り勘で
81〜100 ここはくじ引きで♪
※コンマ下、!random
485:【87】:2018/10/01(月)10:06:40 :ad3
あ
486:◆Try7rHwMFw:2018/10/01(月)12:39:53 :Mwl
千歳が紙をよった奴を4本取り出した。一つだけ先端に赤い印がついている。
「ここはくじ引きで♪雪風ちゃんたちには払わせられないですし。提督にお願いしようと思いましたけど、さすがにかわいそうかなって」
「お前どこから取り出したんだよ……じゃあ、いっせーのせっで引くぞ。せーの」
01〜03 ゴーヤ
04〜06 提督
07〜09 千歳
10〜100 扶桑
※コンマ下、!random
千歳が紙をよった奴を4本取り出した。一つだけ先端に赤い印がついている。
「ここはくじ引きで♪雪風ちゃんたちには払わせられないですし。提督にお願いしようと思いましたけど、さすがにかわいそうかなって」
「お前どこから取り出したんだよ……じゃあ、いっせーのせっで引くぞ。せーの」
01〜03 ゴーヤ
04〜06 提督
07〜09 千歳
10〜100 扶桑
※コンマ下、!random
487:【40】:2018/10/01(月)12:41:39 :VPz
ほい
488:◆Try7rHwMFw:2018/10/01(月)12:55:40 :Mwl
#
「ふ、不幸だわ……改二になって人並みになったと思ったのに……」
「まあ扶桑さん、お金はあるからいいじゃないですか」
ニコニコと笑いながら店の前で千歳が言う。……こいつ、狙ってたな。
幸運艦のゴーヤがくじ引きで悪いのを引くわけがない。俺もそこそこ悪運は強い方だ。千歳自身はそこまで運がいいわけじゃないが、何か仕込んでたのかもな。
まあ、ある意味の心遣いとでも思っておくか。
「扶桑さん、ありがとうございます!!美味しかったです!!」
「ああ、うん……いいのよ。それはともかく」
扶桑が真剣な目でゴーヤを見る。
「ゴーヤ、3週間後を忘れないで。私が勝つわ」
「……望むところでち」
寄るところがあるらしく、時津風たちとはここで解散になった。残された俺は、ゴーヤに訊く。
「ゴーヤ、勝算はあるのか?あいつ、かなり料理できるぞ。確か、奴の仲間も料理上手が多いし……」
「知ってるでち。だから修行するでち。てーとくの側にいるために、ゴーヤは負けられないんでち」
決意を秘めた目で、ゴーヤは力強く言った。
「修行って……何するんだ?」
「それは内緒でち。協力者もいるでち。
それはそうと、てーとく、帰ろ?」
協力者?誰だろうか……不安を抱えながら、俺たちは家路についた。
#
研修に来た白い雪風ことシュエフェンが鎮守府でブランコ設置に関して一騒動起こすのは、また別の話。
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「ふ、不幸だわ……改二になって人並みになったと思ったのに……」
「まあ扶桑さん、お金はあるからいいじゃないですか」
ニコニコと笑いながら店の前で千歳が言う。……こいつ、狙ってたな。
幸運艦のゴーヤがくじ引きで悪いのを引くわけがない。俺もそこそこ悪運は強い方だ。千歳自身はそこまで運がいいわけじゃないが、何か仕込んでたのかもな。
まあ、ある意味の心遣いとでも思っておくか。
「扶桑さん、ありがとうございます!!美味しかったです!!」
「ああ、うん……いいのよ。それはともかく」
扶桑が真剣な目でゴーヤを見る。
「ゴーヤ、3週間後を忘れないで。私が勝つわ」
「……望むところでち」
寄るところがあるらしく、時津風たちとはここで解散になった。残された俺は、ゴーヤに訊く。
「ゴーヤ、勝算はあるのか?あいつ、かなり料理できるぞ。確か、奴の仲間も料理上手が多いし……」
「知ってるでち。だから修行するでち。てーとくの側にいるために、ゴーヤは負けられないんでち」
決意を秘めた目で、ゴーヤは力強く言った。
「修行って……何するんだ?」
「それは内緒でち。協力者もいるでち。
それはそうと、てーとく、帰ろ?」
協力者?誰だろうか……不安を抱えながら、俺たちは家路についた。
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研修に来た白い雪風ことシュエフェンが鎮守府でブランコ設置に関して一騒動起こすのは、また別の話。
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