590 名前:ゲームセンター名無し[] 投稿日:02/02/11(月) 02:48 ID:0i/925qd [1/4]
ちょっと切ないお話。
もう10年以上前になるかな…俺が厨房の頃、
10坪強ぐらいのお好み焼き屋にテーブル筐体(平ぺったいやつ)十数台
が置いてあった。そこには両替機すら置いていなくて、カウンター越しに
小さな店ではあったが、ナムコの営業所の人がよく来ていたので
メンテナンスも良く、ナムコ系の新作もすぐ入荷するような店だった。
俺の通っていた学校は一応私立の進学校で親元を離れて
寮生活をしている連中が多かった。「おばちゃん」は俺たちの
注文するお好み焼きやラーメンを作ってくれるかたわら、
寮生活や学校生活の不満を聞いてくれたり、相談にのってくれたりと
ある意味、親元を離れている自分たちにとっては母親のような
存在だった。おばちゃんはよく言っていた。
「あんたらはアタシの子供だけんね~。」
(続く)
591 名前:ゲームセンター名無し[] 投稿日:02/02/11(月) 02:48 ID:0i/925qd [2/4]
ある日、その店の近くにあった別の中学の生徒が、俺たちがその店に
たむろしているのを通報したらしく、体育教師がその店にいた俺たちを
補導しにやってきた。その店内で、
「おまえら、こんなとこに出入りしていいと思ってるのか!!」
「しかも、お前らタバコ吸っとったらしいじゃなかか!?」
「!?!?」
俺たちの中で喫煙してるやつはいなかった。
どうも、通報に誇張が混じっていたようだ。かといって、ここで
吸っていないと言い張ったところで到底信じてもらえなさそうな
剣幕で体育教師は自分たちを学校に連れて行こうとしたそのとき、
「ちょっと待ちや。」
「その子たちはタバコなんて吸っとらんよ。
アタシんとこでは子供にはそんなこと絶対させとらんとよ!!」
「先生がその子たちを叱るのはしょんがなかち思うばってん、
その子たちは絶ッ対タバコは吸っとらん。これだけは保証する。」
そのときのおばちゃんの表情は真剣そのものだったし、
現におばちゃんは常々、制服で煙草を吸うような奴には
店から出ていくように言っていた。
そのおかげか、俺たちはこってり絞られはしたものの喫煙については
全く問われることはなかった。
(続く)
592 名前:ゲームセンター名無し[] 投稿日:02/02/11(月) 02:49 ID:0i/925qd [3/4]
そして、舌の根も乾かぬうちにその店に通い続ける俺たち。
2ヶ月位して補導されたことも笑い話になるくらいになった頃、
俺はたまたま一人でその店に行くと、カウンターの中におばちゃんは
いなかった。代わりにおばちゃんよりは少し若い女性がいた。
腹が減っていた俺はラーメンを注文しようとしたが、その人は
今日は店番をまかされているだけで、料理はできないと
そっけなく言った。なんだか、居心地も悪かったので、その日は
ゲームすらやることなくすぐに店を出た。
「おばちゃん」は結局戻ってくることはなかった。
おばちゃんが突然消えてしまった。この事は俺たちにとって
少なからずショックな出来事だった。
そして日が経つにつれ、店内の様子が変わっていった。
近隣の中高校の不良が制服姿で喫煙し、店内の照明も暗くなり、
窓ガラスに黒フィルムが貼られ、両替機が置かれるとカウンターの
中には誰もいなくなった。
(続く)
593 名前:ゲームセンター名無し[] 投稿日:02/02/11(月) 02:49 ID:0i/925qd [4/4]
「おばちゃん」が守ってきた店。
俺たちを守ってくれた「おばちゃん」の店。
金なんか無くてもそこに足を運ぶと何か満たしてくれた店。
その店が変わり果ててゆくのを受け入れられるほど俺たちは
割り切りの良いオトナでもなかったから、自然にその店から
遠のいていった。
確かにおばちゃんが何も告げずに姿を消したことを寂しく
思うこともあった。さりとて、あの時まだまだガキだった
自分に何が出来ただろうかと、今は思う。
お好み焼き「サン」のおばちゃん。今どうしているのかは
分からないけど、あなたの子供の一人はあの少年時代
あなたに会えたことを心から良かったと思ってるよ。
(注)ぱっと見で、わかりにくそうな方言は直しつつ書いたつもり
だけど、分かりにくかったらスマソ…。
ちょっと切ないお話。
もう10年以上前になるかな…俺が厨房の頃、
10坪強ぐらいのお好み焼き屋にテーブル筐体(平ぺったいやつ)十数台
が置いてあった。そこには両替機すら置いていなくて、カウンター越しに
「おばちゃん」に両替してもらっていた。
小さな店ではあったが、ナムコの営業所の人がよく来ていたので
メンテナンスも良く、ナムコ系の新作もすぐ入荷するような店だった。
俺の通っていた学校は一応私立の進学校で親元を離れて
寮生活をしている連中が多かった。「おばちゃん」は俺たちの
注文するお好み焼きやラーメンを作ってくれるかたわら、
寮生活や学校生活の不満を聞いてくれたり、相談にのってくれたりと
ある意味、親元を離れている自分たちにとっては母親のような
存在だった。おばちゃんはよく言っていた。
「あんたらはアタシの子供だけんね~。」
(続く)
591 名前:ゲームセンター名無し[] 投稿日:02/02/11(月) 02:48 ID:0i/925qd [2/4]
ある日、その店の近くにあった別の中学の生徒が、俺たちがその店に
たむろしているのを通報したらしく、体育教師がその店にいた俺たちを
補導しにやってきた。その店内で、
「おまえら、こんなとこに出入りしていいと思ってるのか!!」
「しかも、お前らタバコ吸っとったらしいじゃなかか!?」
「!?!?」
俺たちの中で喫煙してるやつはいなかった。
どうも、通報に誇張が混じっていたようだ。かといって、ここで
吸っていないと言い張ったところで到底信じてもらえなさそうな
剣幕で体育教師は自分たちを学校に連れて行こうとしたそのとき、
「ちょっと待ちや。」
「その子たちはタバコなんて吸っとらんよ。
アタシんとこでは子供にはそんなこと絶対させとらんとよ!!」
「先生がその子たちを叱るのはしょんがなかち思うばってん、
その子たちは絶ッ対タバコは吸っとらん。これだけは保証する。」
そのときのおばちゃんの表情は真剣そのものだったし、
現におばちゃんは常々、制服で煙草を吸うような奴には
店から出ていくように言っていた。
そのおかげか、俺たちはこってり絞られはしたものの喫煙については
全く問われることはなかった。
(続く)
592 名前:ゲームセンター名無し[] 投稿日:02/02/11(月) 02:49 ID:0i/925qd [3/4]
そして、舌の根も乾かぬうちにその店に通い続ける俺たち。
2ヶ月位して補導されたことも笑い話になるくらいになった頃、
俺はたまたま一人でその店に行くと、カウンターの中におばちゃんは
いなかった。代わりにおばちゃんよりは少し若い女性がいた。
腹が減っていた俺はラーメンを注文しようとしたが、その人は
今日は店番をまかされているだけで、料理はできないと
そっけなく言った。なんだか、居心地も悪かったので、その日は
ゲームすらやることなくすぐに店を出た。
「おばちゃん」は結局戻ってくることはなかった。
おばちゃんが突然消えてしまった。この事は俺たちにとって
少なからずショックな出来事だった。
そして日が経つにつれ、店内の様子が変わっていった。
近隣の中高校の不良が制服姿で喫煙し、店内の照明も暗くなり、
窓ガラスに黒フィルムが貼られ、両替機が置かれるとカウンターの
中には誰もいなくなった。
(続く)
593 名前:ゲームセンター名無し[] 投稿日:02/02/11(月) 02:49 ID:0i/925qd [4/4]
「おばちゃん」が守ってきた店。
俺たちを守ってくれた「おばちゃん」の店。
金なんか無くてもそこに足を運ぶと何か満たしてくれた店。
その店が変わり果ててゆくのを受け入れられるほど俺たちは
割り切りの良いオトナでもなかったから、自然にその店から
遠のいていった。
確かにおばちゃんが何も告げずに姿を消したことを寂しく
思うこともあった。さりとて、あの時まだまだガキだった
自分に何が出来ただろうかと、今は思う。
お好み焼き「サン」のおばちゃん。今どうしているのかは
分からないけど、あなたの子供の一人はあの少年時代
あなたに会えたことを心から良かったと思ってるよ。
(注)ぱっと見で、わかりにくそうな方言は直しつつ書いたつもり
だけど、分かりにくかったらスマソ…。