親鳥がいなくなったカモのヒナたち。そのヒナたちの母親役をかってでたラブラドール犬（イギリス）

　ロンドンの北東50km程、エセックス州に、スタンステッド・マウントフィーチェットという観光地がある。中世ノルマン人の城廓を再現したテーマパークだ。

　5月17日、このパーク内に、9匹のカモのヒナ軍団が突如として現れた。

　親鳥の姿は見当たらなかった。おそらく、ヒナが孵化した直後にキツネにでも襲われたのだろうと関係者は見ている。

　それはともかく、このヒナたちをどうしようか、と関係者は頭を悩ませた。このまま放っておけば、遠からず死んでしまうことは間違いない。

　だが、心配はいらなかった。すぐに強力な助っ人が登場したのだ。パーク内で飼われている、10歳になるラブラドール・レトリバーのフレッドである。

心配ないからね。ヒナは私が育ててあげる

　9羽のヒナを見つけた人々は、とりあえず保護しようと家に運び込んだ。ラブラドール・レトリバーのオスであるフレッドもその家で飼われていたのである。

　ヒナを見たフレッドはすぐにやってきて、ヒナたちを前足で囲い込んだ。親鳥が翼の下にヒナを入れて守るように。 　フレッドは「本物のお母さん」よりは大分大きく、肌触りも異なっているだろう。しかもオスだ。だがそれでもインプリンティング(刷り込み)には問題なかったようだ。

　ヒナたちはフレッドがどこへ行こうと追いかけていくそうだ。

　フレッドもまた、毎日ヒナたちを泳ぎに連れて行き、夜は自分の寝床になっているバスケットにいれて一緒に眠り、とかいがいしく世話をしている。

愛に満ちた育てのお父さん

　飼い主のジェレミー・ゴールドスミスさんによると、フレッドは元から愛情豊かで、面倒見のいい性質であったという。

　「フレッドは、この城と我々の家とで、私と妻が保護した動物たちと一緒に育ったんです」とジェレミーさん。

　「例えば、道端で保護したリスを半年間キッチンで飼っていたことすらありました」 　「(フレッドには)父親としての素晴らしい本能があり、9羽のヒナを残らず世話しています。私たちの自慢の犬ですよ」 　フレッドが育児に専念する期間はあと2ヶ月程だろう。その後は、独り立ちしたヒナたちは自分たちの世界へ戻っていくことになる。

　その日まで、フレッド父さんの愛情に包まれて、すくすくと成長してほしい。

References: The Dodo / BBC など / written by K.Y.K. / edited by parumo
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