1:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 18:24:43.311 :K5zcmJFx0.net
腕に抱えるドリップコーヒーの詰め合わせは、いつになく軽かった。
行き交う人々の足取りも、心なしか軽く見える。
九月も中頃に入り、ようやく暑さも落ち着いたこの時期、つい数週間ほど前の夏を懐かしいと感じてしまうほどに、快適な陽気が戻ってきた。
とはいえ、夏は中元の配達に忙殺されていたため、木古にとって懐古できるのは猛暑だけだった。
褐色に焼けた肌も、海で焼いたものではない。
毎日のように、ビールの箱などを抱えながら奔走していたのだ。
うだるような暑さではあったが、辛くはなかった。
あの夏、暑さよりも辛い体験をした木古にとっては。
腕に抱えるドリップコーヒーの詰め合わせは、いつになく軽かった。
行き交う人々の足取りも、心なしか軽く見える。
九月も中頃に入り、ようやく暑さも落ち着いたこの時期、つい数週間ほど前の夏を懐かしいと感じてしまうほどに、快適な陽気が戻ってきた。
とはいえ、夏は中元の配達に忙殺されていたため、木古にとって懐古できるのは猛暑だけだった。
褐色に焼けた肌も、海で焼いたものではない。
毎日のように、ビールの箱などを抱えながら奔走していたのだ。
うだるような暑さではあったが、辛くはなかった。
あの夏、暑さよりも辛い体験をした木古にとっては。
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2:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 18:25:56.092 :K5zcmJFx0.net
(,,゚Д゚)「はぁ……」
木古は配達先がある住宅地を歩きながら、小さく溜息をついた。
また思い出してしまったのだ。
あれは八月も半ば、暑さがピークを迎えていた夏の夜だった。
クーラーの設置されていない2Kの和室アパートで、ビールを飲みながらテレビを眺めていると、出し抜けに畳のうえの黒いスマホが鳴った。
表示を見ると、彼女からの着信だった。
その着信を見た瞬間、木古は「来た……」と脂汗が滲むのを感じた。
今日、上司に連休をもらえないかと談判したが、にべもなく一蹴されたことを、彼女に報告しなければならない。
いくら食い下がったと弁解したところで、許してもらえるのだろうか……。
木古は一縷の望みにかけ、電話に出た。
(,,゚Д゚)「はぁ……」
木古は配達先がある住宅地を歩きながら、小さく溜息をついた。
また思い出してしまったのだ。
あれは八月も半ば、暑さがピークを迎えていた夏の夜だった。
クーラーの設置されていない2Kの和室アパートで、ビールを飲みながらテレビを眺めていると、出し抜けに畳のうえの黒いスマホが鳴った。
表示を見ると、彼女からの着信だった。
その着信を見た瞬間、木古は「来た……」と脂汗が滲むのを感じた。
今日、上司に連休をもらえないかと談判したが、にべもなく一蹴されたことを、彼女に報告しなければならない。
いくら食い下がったと弁解したところで、許してもらえるのだろうか……。
木古は一縷の望みにかけ、電話に出た。
4:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 18:28:42.030 :K5zcmJFx0.net
(;,,゚Д゚)】「も、もしもし」
平静を装いたかったが、やはりどもってしまった。
声も若干震えているかも知れない。
固唾を呑んで彼女の言葉を待ったが、一分ほどしても応答がない。
怪訝に思った木古はもう一度、もしもし、と語りかけた。
するとしばしの間をおき、あのね、と小さな声が返ってきた。
(;,,゚Д゚)】「うん」
木古はスマホを強く握りしめた。
「あのね……私……好きな……人ができたの」
言い淀みながらも、彼女は明言した。
(,,゚Д゚)】「え?」
ショック、というよりも、木古はまだ状況を把握できずにいた。
(;,,゚Д゚)】「も、もしもし」
平静を装いたかったが、やはりどもってしまった。
声も若干震えているかも知れない。
固唾を呑んで彼女の言葉を待ったが、一分ほどしても応答がない。
怪訝に思った木古はもう一度、もしもし、と語りかけた。
するとしばしの間をおき、あのね、と小さな声が返ってきた。
(;,,゚Д゚)】「うん」
木古はスマホを強く握りしめた。
「あのね……私……好きな……人ができたの」
言い淀みながらも、彼女は明言した。
(,,゚Д゚)】「え?」
ショック、というよりも、木古はまだ状況を把握できずにいた。
6:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 18:31:07.771 :K5zcmJFx0.net
いや、違う。
まさかそんなはずは……。
(,,゚Д゚)】「……」
言葉が浮かばなかった。
必死に思考をめぐらし、なにか言葉を探している木古に、彼女は容赦なく止めを刺した。
「だから、別れて欲しいの」
その一言で、木古の頭は真っ白になった。
スマホを落とし、間の抜けたように目と口を開けたまま放心してしまった。
見開かれた目には、なにも映ってはいない。
ただただ、視界は真っ白に覆われていた。
木古を嘲弄するかのように、バラエティ番組の笑い声が、部屋にこだます。
いや、違う。
まさかそんなはずは……。
(,,゚Д゚)】「……」
言葉が浮かばなかった。
必死に思考をめぐらし、なにか言葉を探している木古に、彼女は容赦なく止めを刺した。
「だから、別れて欲しいの」
その一言で、木古の頭は真っ白になった。
スマホを落とし、間の抜けたように目と口を開けたまま放心してしまった。
見開かれた目には、なにも映ってはいない。
ただただ、視界は真っ白に覆われていた。
木古を嘲弄するかのように、バラエティ番組の笑い声が、部屋にこだます。
7:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 18:32:46.911 :K5zcmJFx0.net
木古が放心から覚めたのは、それから数時間が経過した頃だった。
テレビの画面はすでに砂嵐になり、笑い声はノイズに変わっている。
木古は即座にスマホを手に取ると、彼女に電話をかけた。
しかし、着信拒否をされたのか、一向に繋がることはなかった。
どうすればいい……。
いきなり背後から、奈落に突き落とされたかのような気分だった。
元々彼女は移り気な人だったのか、それともやはり愛想を尽かされたのか、どちらなのかわからない。
心当たりもなかった。
木古が放心から覚めたのは、それから数時間が経過した頃だった。
テレビの画面はすでに砂嵐になり、笑い声はノイズに変わっている。
木古は即座にスマホを手に取ると、彼女に電話をかけた。
しかし、着信拒否をされたのか、一向に繋がることはなかった。
どうすればいい……。
いきなり背後から、奈落に突き落とされたかのような気分だった。
元々彼女は移り気な人だったのか、それともやはり愛想を尽かされたのか、どちらなのかわからない。
心当たりもなかった。
8:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 18:35:51.870 :K5zcmJFx0.net
夏はギフトシーズンで忙しくなると、以前から説明していた。
だから、彼女も理解してくれているはずだった。
いや、それはおれの勘違いだったのか……。
確かめようにも、もう電話は繋がらない。
つき合ってまだ二ヶ月だ。
彼女の自宅がどこにあるのかもわからない。
わかるのは、理由も明かされず、一方的に切り捨てられたという事実だけだった。
木古は悲嘆に暮れることしかできなかった――
夏はギフトシーズンで忙しくなると、以前から説明していた。
だから、彼女も理解してくれているはずだった。
いや、それはおれの勘違いだったのか……。
確かめようにも、もう電話は繋がらない。
つき合ってまだ二ヶ月だ。
彼女の自宅がどこにあるのかもわからない。
わかるのは、理由も明かされず、一方的に切り捨てられたという事実だけだった。
木古は悲嘆に暮れることしかできなかった――
9:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 18:37:36.522 :K5zcmJFx0.net
(,,゚Д゚)「……」
あれからも彼女とは連絡がつかずにいた。
いや、元彼女というべきなのだろうか。
しつこく電話をかけたり、自宅を突き止めたりと、ストーカー紛いの行為に出るわけにもいかなかったので、木古は漠然と日々を過ごす他なかった。
だが、彼女のことはもう諦めようと、気持ちを切り替えることもできずにいた。
(,,゚Д゚)「……」
あれからも彼女とは連絡がつかずにいた。
いや、元彼女というべきなのだろうか。
しつこく電話をかけたり、自宅を突き止めたりと、ストーカー紛いの行為に出るわけにもいかなかったので、木古は漠然と日々を過ごす他なかった。
だが、彼女のことはもう諦めようと、気持ちを切り替えることもできずにいた。
10:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 18:40:22.614 :K5zcmJFx0.net
その時、半ば茫然と歩いている木古の視界が、長く続くブロック塀をとらえた。
塀から覗く黒い瓦ぶきの屋根と茶色い外壁。
目的の家に到着したのだと、この時になってようやく気づいた。
木古はいったん立ち止まり、危うく通り過ぎてしまうところだったと焦りを覚えながら、頭を左右に振った。
気を入れなおすために、一度深呼吸をしてから再び歩き始める。
そのまま直進し、両開きの門扉の前に立った。
その時、半ば茫然と歩いている木古の視界が、長く続くブロック塀をとらえた。
塀から覗く黒い瓦ぶきの屋根と茶色い外壁。
目的の家に到着したのだと、この時になってようやく気づいた。
木古はいったん立ち止まり、危うく通り過ぎてしまうところだったと焦りを覚えながら、頭を左右に振った。
気を入れなおすために、一度深呼吸をしてから再び歩き始める。
そのまま直進し、両開きの門扉の前に立った。
11:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 18:45:19.740 :K5zcmJFx0.net
家は木造の二階建てで、特別でかくも小さくもない庶民的な佇まいをしている。
右側の門柱に受取人の名字が彫られた檜の表札が掛っているが、インターホンはついていなかった。
勝手に門扉を開いて敷地内に入ってもいいのだろうか。
思案に暮れながら前庭を覗くと、そこの右側に、しゃがみ込んだ女性の後ろ姿があった。
白いブラウスと丈が長い濃紺のスカートを着け、背中の中ほどまで黒髪を伸ばしている。
木古はその背中に声をかけた。
家は木造の二階建てで、特別でかくも小さくもない庶民的な佇まいをしている。
右側の門柱に受取人の名字が彫られた檜の表札が掛っているが、インターホンはついていなかった。
勝手に門扉を開いて敷地内に入ってもいいのだろうか。
思案に暮れながら前庭を覗くと、そこの右側に、しゃがみ込んだ女性の後ろ姿があった。
白いブラウスと丈が長い濃紺のスカートを着け、背中の中ほどまで黒髪を伸ばしている。
木古はその背中に声をかけた。
12:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 18:48:36.946 :K5zcmJFx0.net
(,,゚Д゚)「すみません」
木古の声に驚いたのか、女性は体を一瞬びくりと震わせた。
首と腰を回し、ゆっくりと振り返る。
('、`*川
化粧気の感じられない色白の顔に、柔和な垂れ眼。
歳は二十代後半から三十代か。
どちらともとれるが、見当がつきかねた。
(;,,゚Д゚)「あ、すみません。
びっくりさせちゃいましたか……」
謝罪しながら頭を下げる木古を見て、女性は焦った様子で首を振った。
('、`*;川「いえ、私のほうこそ気がつかなくてすみませんでした」
木古は胸を撫で下ろすと、一呼吸置いてから届け物を掲げて見せた。
(,,゚Д゚)「すみません」
木古の声に驚いたのか、女性は体を一瞬びくりと震わせた。
首と腰を回し、ゆっくりと振り返る。
('、`*川
化粧気の感じられない色白の顔に、柔和な垂れ眼。
歳は二十代後半から三十代か。
どちらともとれるが、見当がつきかねた。
(;,,゚Д゚)「あ、すみません。
びっくりさせちゃいましたか……」
謝罪しながら頭を下げる木古を見て、女性は焦った様子で首を振った。
('、`*;川「いえ、私のほうこそ気がつかなくてすみませんでした」
木古は胸を撫で下ろすと、一呼吸置いてから届け物を掲げて見せた。
13:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 18:52:11.665 :K5zcmJFx0.net
(,,゚Д゚)「伊藤さんにお届けものです」
('、`*川「ご苦労様です」
女性は会釈してから立ち上がると、門扉を開いて木古を招いた。
木古も会釈を返し、敷地内に足を踏み入れた。
('、`*川「ちょっとまっててください。
家から判子をとってきますので」
(,,゚Д゚)「はい」
女性はそう言い残すと、丸い飛び石の埋め込まれたアプローチを通り、格子戸を開けて家の中へと消えた。
(,,゚Д゚)「伊藤さんにお届けものです」
('、`*川「ご苦労様です」
女性は会釈してから立ち上がると、門扉を開いて木古を招いた。
木古も会釈を返し、敷地内に足を踏み入れた。
('、`*川「ちょっとまっててください。
家から判子をとってきますので」
(,,゚Д゚)「はい」
女性はそう言い残すと、丸い飛び石の埋め込まれたアプローチを通り、格子戸を開けて家の中へと消えた。
14:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 18:56:40.895 :K5zcmJFx0.net
木古は女性が戻ってくる間、家の周りを眺めていることにした。
庭の広さはせいぜい五、六十平米といったところか。
縁側と物干し台のある左側の一帯には芝生が敷き詰められており、木古が立っている右側の一帯は土の地面が露わになっている。
まるで境界線のようだと木古は思った。
その木古が立っている一帯には、芝生の代わりに四つの灌木が塀に沿って植わっており、深緑の葉群れが四角い輪郭をとっている。
他には、無数の葉が小山となって木古の足元に積まれていた。
その葉が灌木のものであることはすぐにわかった。
あの人がしゃがみ込んでいた理由はこれだったのか。
多分、焚き火でもするつもりなんだろう。
焚き火か……。
木古は女性が戻ってくる間、家の周りを眺めていることにした。
庭の広さはせいぜい五、六十平米といったところか。
縁側と物干し台のある左側の一帯には芝生が敷き詰められており、木古が立っている右側の一帯は土の地面が露わになっている。
まるで境界線のようだと木古は思った。
その木古が立っている一帯には、芝生の代わりに四つの灌木が塀に沿って植わっており、深緑の葉群れが四角い輪郭をとっている。
他には、無数の葉が小山となって木古の足元に積まれていた。
その葉が灌木のものであることはすぐにわかった。
あの人がしゃがみ込んでいた理由はこれだったのか。
多分、焚き火でもするつもりなんだろう。
焚き火か……。
15:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 19:01:22.876 :K5zcmJFx0.net
そのまま葉の堆積した小山を眺めていると、正面から声がかかった。
「お待たせしました」
はっとして顔を上げると、先ほどの女性が黒いシャチハタを持って木古の前に立っていた。
右手には500mlの緑茶のペットボトルが握られている。
木古は我に返ったように、「あ、お手数おかけしてすません」と言いながら頭を下げ、伝票を差し出した。
(,,゚Д゚)「では、こちらに判子をお願いします」
('、`*川「はい」
女性は伝票にシャチハタの印を押し、木古に渡した。
そのまま葉の堆積した小山を眺めていると、正面から声がかかった。
「お待たせしました」
はっとして顔を上げると、先ほどの女性が黒いシャチハタを持って木古の前に立っていた。
右手には500mlの緑茶のペットボトルが握られている。
木古は我に返ったように、「あ、お手数おかけしてすません」と言いながら頭を下げ、伝票を差し出した。
(,,゚Д゚)「では、こちらに判子をお願いします」
('、`*川「はい」
女性は伝票にシャチハタの印を押し、木古に渡した。
16:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 19:05:53.763 :K5zcmJFx0.net
(,,゚Д゚)「ありがとうございます。
あの、お荷物は玄関にお運びしましょうか?」
女性は笑顔を浮かべながら手を振った。
('、`*川「いえ、ここで渡してくださって結構ですよ。
そんなに重いものでもないんでしょ?」
(,,゚Д゚)「はい。軽いことは軽いですが、ご注意ください」
女性は頷くと、木古から渡された荷物を赤子を扱うように優しく抱え、右手に持った緑茶を差し出した。
('、`*川「よかったら飲んでください」
木古は恐縮したが、せっかくの厚意を無下にするわけにもいかないので、
(,,゚Д゚)「ありがとうございます。いただきます」
と礼を言い、素直に受け取った。
配達が完了し、あとはこの場を後にするだけだったが、木古は思い切ってある質問を投げかけてみた。
(,,゚Д゚)「ありがとうございます。
あの、お荷物は玄関にお運びしましょうか?」
女性は笑顔を浮かべながら手を振った。
('、`*川「いえ、ここで渡してくださって結構ですよ。
そんなに重いものでもないんでしょ?」
(,,゚Д゚)「はい。軽いことは軽いですが、ご注意ください」
女性は頷くと、木古から渡された荷物を赤子を扱うように優しく抱え、右手に持った緑茶を差し出した。
('、`*川「よかったら飲んでください」
木古は恐縮したが、せっかくの厚意を無下にするわけにもいかないので、
(,,゚Д゚)「ありがとうございます。いただきます」
と礼を言い、素直に受け取った。
配達が完了し、あとはこの場を後にするだけだったが、木古は思い切ってある質問を投げかけてみた。
17:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 19:12:48.453 :K5zcmJFx0.net
(,,゚Д゚)「焚き火、ですか?」
('、`*川「え?」
女性が疑問の表情を浮かべる。
木古は足元の小山を見下ろした。
その視線に気づいた女性は、思わず破顔した。
('、`*川「ええ、そうですよ。
ようやく暑さもおさまってきたので、気が早いかも知れませんが」
(,,゚Д゚)「……」
木古は小山を諦視したまま硬直していた。
じっと何かを考えているかのように。
しかし、女性には木古がなにを考えているのかなど、皆目見当がつかない。
意を決し、恐る恐る声をかけようとしたときだった。
木古が顔をあげ、硬い表情で女性の目を見つめると、呟くようにこう言った。
(,,゚Д゚)「焚き火、ですか?」
('、`*川「え?」
女性が疑問の表情を浮かべる。
木古は足元の小山を見下ろした。
その視線に気づいた女性は、思わず破顔した。
('、`*川「ええ、そうですよ。
ようやく暑さもおさまってきたので、気が早いかも知れませんが」
(,,゚Д゚)「……」
木古は小山を諦視したまま硬直していた。
じっと何かを考えているかのように。
しかし、女性には木古がなにを考えているのかなど、皆目見当がつかない。
意を決し、恐る恐る声をかけようとしたときだった。
木古が顔をあげ、硬い表情で女性の目を見つめると、呟くようにこう言った。
18:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 19:15:22.304 :K5zcmJFx0.net
(,,゚Д゚)「あの、お願いがあるのですが」
('、`*川「お願い?」
(,,゚Д゚)「はい」
木古はズボンの尻ポケットから黒革の財布を取り出すと、そこから一枚の写真を抜き出した。
それは、彼女とつき合って初めてのデートで撮った写真だった。
場所は遊園地で、煌びやかなイルミネーションの施された観覧車を背景に、二人が笑顔を浮かべている。
木古はその写真を提示しながら、女性に言った。
(,,゚Д゚)「この写真も一緒に焼いてほしいんです」
唐突な申し出に女性は胸を突かれた。
戸惑いの表情を浮かべる女性に木古は続けた。
(,,゚Д゚)「あの、お願いがあるのですが」
('、`*川「お願い?」
(,,゚Д゚)「はい」
木古はズボンの尻ポケットから黒革の財布を取り出すと、そこから一枚の写真を抜き出した。
それは、彼女とつき合って初めてのデートで撮った写真だった。
場所は遊園地で、煌びやかなイルミネーションの施された観覧車を背景に、二人が笑顔を浮かべている。
木古はその写真を提示しながら、女性に言った。
(,,゚Д゚)「この写真も一緒に焼いてほしいんです」
唐突な申し出に女性は胸を突かれた。
戸惑いの表情を浮かべる女性に木古は続けた。
19:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 19:17:13.010 :K5zcmJFx0.net
(,,゚Д゚)「今ようやく決心がついたんです。
お願いできないでしょうか」
淡々としていながらも、決意の込められた口調だった。
無表情でありながら、その目には確固たる意志が宿っていた。
隠然たる圧力に気圧されたかのように、女性は頷いた。
('、`*;川「わ、わかりました。
葉っぱのうえに置いておいてください」
(,,゚Д゚)「ありがとうございます」
木古は恭しく頭を下げ、小山にしゃがみこむと、写真を裏向きにしてそのうえに置き、そっと立ち上がった。
そのごく自然な動作に、躊躇いは感じられない。
(,,゚Д゚)「今ようやく決心がついたんです。
お願いできないでしょうか」
淡々としていながらも、決意の込められた口調だった。
無表情でありながら、その目には確固たる意志が宿っていた。
隠然たる圧力に気圧されたかのように、女性は頷いた。
('、`*;川「わ、わかりました。
葉っぱのうえに置いておいてください」
(,,゚Д゚)「ありがとうございます」
木古は恭しく頭を下げ、小山にしゃがみこむと、写真を裏向きにしてそのうえに置き、そっと立ち上がった。
そのごく自然な動作に、躊躇いは感じられない。
21:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 19:20:51.912 :K5zcmJFx0.net
茫然と立ち尽くす女性に、木古は再び頭を下げた。
(,,゚Д゚)「無理を聞いていただき、本当にありがとうございます」
('、`*川「いえ」
控えめな声で、女性が返す。
(,,゚Д゚)「それでは、失礼いたします。
お茶、ありがとうございました」
最後にもう一度深く頭を下げ、回れ右をした。
悠然とした足取りで門扉を潜ると、そのまま塀越しに頭を覗かせながら、女性の視界を横切っていく。
茫然と立ち尽くす女性に、木古は再び頭を下げた。
(,,゚Д゚)「無理を聞いていただき、本当にありがとうございます」
('、`*川「いえ」
控えめな声で、女性が返す。
(,,゚Д゚)「それでは、失礼いたします。
お茶、ありがとうございました」
最後にもう一度深く頭を下げ、回れ右をした。
悠然とした足取りで門扉を潜ると、そのまま塀越しに頭を覗かせながら、女性の視界を横切っていく。
22:以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2019/09/20(金) 19:24:07.136 :K5zcmJFx0.net
女性はその様子をじっと見送ってから、視線を葉の小山に落とした。
深緑の葉群れに紛れた白い紙はひときわ異彩を放っている。
今どき紙の写真を持ち歩くなんて、ロマンチストなところがあるのかしら。
考えながら、もう少し写真を見てみようかという好奇心が湧いた。
だが、軽くかぶりを振り、その気持ちは押しとどめた。
女性は写真が風に飛ばされないよう、物置から水色のバケツと煉瓦を持ってくると、逆さまにしたバケツを写真が置かれている一辺に被せ、その上に煉瓦を乗せた。
そして、しっかりと固定されているのを確かめてから、家へ向かった。
完
女性はその様子をじっと見送ってから、視線を葉の小山に落とした。
深緑の葉群れに紛れた白い紙はひときわ異彩を放っている。
今どき紙の写真を持ち歩くなんて、ロマンチストなところがあるのかしら。
考えながら、もう少し写真を見てみようかという好奇心が湧いた。
だが、軽くかぶりを振り、その気持ちは押しとどめた。
女性は写真が風に飛ばされないよう、物置から水色のバケツと煉瓦を持ってくると、逆さまにしたバケツを写真が置かれている一辺に被せ、その上に煉瓦を乗せた。
そして、しっかりと固定されているのを確かめてから、家へ向かった。
完
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