666 名前:おさかなくわえた名無しさん[] 投稿日:04/03/10(水) 16:56 ID:y7p00XZ7
チンチラシルバーのオス。本当は姉の飼い猫なのだが、事情があって実家に預けられた。

これがなかなか気難しい猫で、父や母に慣れるのに随分時間がかかった。
元々動物好きな父は、仲良くなろうとよく構っていたが、その度かまれ、ひっかかれて
「こいつかわいくない」と言っていた。

新しい環境にすっかり慣れた頃、父が病気になった。
自宅療養の日々。父の寝ている布団から一定の距離をおいた場所から、その猫は
じっと見守るように座っていた。時々父が起き上がって苦しそうにうめいていると、
たたっとそばに駆け寄って、父の顔を覗き込むように見上げ、鳴いた。まるで気遣い、
声をかける様に。

病院に移ってから父は、猫の感触を感じるとたびたび言っていた。それは痛み止め
による幻覚で、もちろん傍にいたわけはないのだけれど。

それから程なく、父が家に帰ってきた。いつも寝ていたその部屋に、冷たくなって横たわる
父を見て、その猫は二声三声鳴いて傍へ寄ろうとした。だめだよと止めても、何度でも。
諦めて自由にさせたら、父の周りをうろうろ歩き、父の頭の近くに座り込んだ。いつも
そうしていたように。

今もその猫は母と実家で暮らしている。父の仏壇の前に置かれた座布団の上、日当たりの
良いその場所で昼寝して、夜は母の布団で一緒に枕を使って眠る毎日だ。




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